経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で社会保障委員会(斎藤勝利委員長、鈴木茂晴共同委員長)を開催し、厚生労働省社会保障担当参事官室の森真弘政策企画官から、社会保障制度改革の方向性や進捗状況について聞くとともに、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 社会保障給付と負担の現状
日本の人口推移をみると、団塊の世代が2013年に年金を受給し始め、25年には後期高齢者となる。団塊の世代の高齢化に伴い社会保障関係費の大幅増加が見込まれることから、25年までに持続可能な社会保障制度を構築することが重要である。社会保障給付費は、1970年に国民所得の5.77%であったものが、14年(予算ベース)には115.2兆円と国民所得の31.09%にまで増加しており、これまでも痛みを伴う改革を実施しているが、さらなる改革を進めていく必要がある。
■ 社会保障と税の一体改革の経緯
社会保障と税の一体改革は、08年の社会保障国民会議に始まり、政権交代、さらには与野党交えた3党協議を経て、12年8月に社会保障・税一体改革関連8法案が成立した。13年12月にはさらなる改革の進め方などを示す社会保障制度改革プログラム法案が成立した。社会保障制度の安定財源確保と財政健全化の同時達成を図るため、消費税率が今年4月に8%へと引き上げられ、来年10月からは10%に引き上げられる予定である。
■ 改革の方向性
一体改革では、社会保障の充実と給付の重点化、効率化をあわせて行うなかで持続可能性を高め、子育て支援に財源を使うことで若い世代にも還元し、安心感と納得感の得られる、「全世代型」の社会保障制度に転換を図るとの方向性を打ち出した。
具体的には、子ども・子育て分野では、幼児教育・保育の質と量の向上などを含む新支援制度の創設、待機児童解消加速化プラン等を推進する。医療・介護分野では、病床の役割分化・連携強化、在宅医療の推進、地域包括ケアシステム構築の推進、医療・介護保険料の所得に応じた見直しなどを行う。年金分野では、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大、高齢期の就労と年金受給のあり方、マクロ経済スライドのあり方などを議論する予定である。
<意見交換>
「これまで少子化対策をさまざまなかたちで講じてきたが、子どもの数が増えていない。晩婚化対策も必要ではないか」との指摘に対して、「晩婚化対策については、あくまで個人の選択にかかわる問題なので、自由度を持ったうえでどうアプローチすべきか考えている」との回答があった。また、「社会保障給付の効率化にあたってマイナンバーをどう活用するのか」との質問には、「今後、レセプトデータへのマイナンバーの追加・活用により治療・投薬の効果検証を通じて、給付の適正化につなげていく」との考えが示された。
【経済政策本部】