経団連(米倉弘昌会長)は、提言「戦略的なインフラ・システムの海外展開に向けて」を取りまとめ、19日に公表した。提言は、インフラ・システムの海外展開を効果的に進めていくために、公的資源を選択と集中の観点から企業の関心の高い地域・国ならびに対象分野に配分することを求めたもの。提言のポイントは次のとおり。
■ 関心の高い地域・国
グローバル時代にあって、わが国経済界は、全世界を相手にインフラ・システムの海外展開のための戦略を練っているところであるが、特に次の地域・国への関心が高い。
- (1)成長のエンジンであるアジアのメコン、インドネシア・フィリピン等のBIMP(島嶼地域)、インド、中国等
- (2)再生可能エネルギーに対する需要や復興需要があり、産業の多角化・高度化を目指している中東の産油・産ガス国やトルコ
- (3)中間所得層が台頭し、市場規模の大きい中南米のブラジル、メキシコ、コロンビア等
- (4)日本企業が進出している主要国をはじめ、TICAD V(第5回アフリカ開発会議)開催にあたっての経団連提言「サブサハラ・アフリカの持続可能な成長に貢献するために」で示したアフリカの14カ国(注)を中心とする地域・国
- (5)米国・カナダ、欧州、豪州、ロシア・NIS(旧ソ連新独立国家)等の先進国を含むその他地域
(注)南部アフリカ(アンゴラ、ボツワナ、モザンビーク、ナミビア、南アフリカ、ザンビア、ジンバブエ)、東アフリカ(エチオピア、ケニア、南スーダン、タンザニア、ウガンダ)、西アフリカ(ガーナ、ナイジェリア)
■ 関心の高い分野
また、それぞれの地域・国において、特に関心の高い事業分野の例として、次のようなものが挙げられる。
- (1)アジア=(1)ベトナムの高速鉄道や原子力発電・防災対策等(2)ミャンマーの電力、工業団地・経済特区の整備(3)インドネシアのジャカルタ首都圏投資促進特別地域(MPA)の優先事業(4)インドの南部中核拠点開発構想や電力等
- (2)中東地域=(1)サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、オマーンでの再生可能エネルギー(太陽光・太陽熱、風力、原子力)(2)トルコの原子力発電、宇宙関連事業
- (3)中南米=(1)ブラジルのロジスティクス・インフラの整備を通じたサプライチェーンの確立や海洋資源開発関連(2)チリの防災・災害対策
- (4)その他地域=(1)アフリカ(サブサハラ地域)の発電所や鉄道などの整備(2)米国・カナダにおけるシェールガス開発、高速鉄道(3)欧州の鉄道、港湾、空港等
■ 求められる施策
わが国企業がこれらの地域・国のインフラ市場に参入し、受注を成功裡に進めていくためには、地域・国ごとに「わが国の課題」と「相手国の課題」にそれぞれ取り組むことが必要である。また、各地域・国に共通して必要となる施策は、次の五つの事項である。
- (1)企業間の戦略的連携による競争力の向上
- (2)官民一体のトップセールスの推進と相手国政府首脳の理解促進と受注の獲得
- (3)ODAの迅速な執行、JBIC(国際協力銀行)の現地通貨建てファイナンスの拡大や貿易保険の柔軟な付保
- (4)JICA(国際協力機構)現地事務所の体制強化および拡充と対象国のマスタープラン作成への関与
- (5)ODA予算の拡充と有償資金の円滑な供与
※提言の全文はホームページ(http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/100.html)参照
【国際協力本部】