経団連(米倉弘昌会長)の経済外交委員会(川村隆委員長、大林剛郎共同委員長)は10月28日、東京・大手町の経団連会館で谷内正太郎内閣官房参与・元外務事務次官を来賓に迎え、安倍政権の外交戦略について聞いた。会合では大林共同委員長が座長を務め、約80名が出席した。谷内参与の説明概要は次のとおり。
■ 安倍政権の課題
参議院議員選挙では与党が勝利したが、これは経済再生と長期安定政権を実現してほしいという国民の期待の表れと思う。
安倍総理は強いリーダーであり、TPP(環太平洋経済連携協定)、消費税率引き上げなど重要政策の着実な実行に努めている。国力が低下すれば周辺国から足元をみられることとなり、その意味でも経済再生は重要である。
■ 安倍外交の展開
安倍外交は地球儀を俯瞰する外交であり、わが国と価値観を共有する世界中の国々との関係強化を図っている。安倍総理は就任以降、すでに20カ国以上を訪問し、110名以上の外国首脳と会っている。
海洋国家である日本にとって、自由で開かれた海洋秩序が不可欠である。そのために日米を機軸とし、同じく海洋国家であるオーストラリア、フィリピン等との連携を強化すべきである。また、欧州諸国とは、自由・民主主義・人権・法の支配という普遍的な価値観を共有しており、連携を強化すべきである。
■ 積極的平和主義
利己的な一国平和主義ではなく、国連平和維持活動などの国際平和協力を積極的に進めていこうという積極的平和主義(proactive contribution to peace)が、国家安全保障戦略の柱である。
わが国の国内体制としては、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議の創設のための法案が国会で審議されている。成立すれば、その事務局として来年1月にも国家安全保障局が発足する予定である。
日中関係については、このままでは日中両国にとって望ましくない。中国に対しては、エンゲージメントとヘッジングで対応し、アンテナを張って関係改善のきっかけを辛抱強く待ち続けることが重要である。
【国際経済本部】