経団連は9月26日、東京・大手町の経団連会館で、第4回「グローバル30産学連携フォーラム」を開催した。「グローバル人材を活かす産学連携」を全体テーマに、奥正之経団連副会長(三井住友フィナンシャルグループ会長)のグローバル人材の育成に向けた取り組みと産学連携に関する「基調講演」(前号既報)の後、東日本と西日本の二つの分科会に分かれて議論を行った。分科会では企業関係者、大学関係者、留学経験者によるグローバル人材育成の場としての大学教育への期待や、グローバル人材育成に向けた産学連携に関し活発な意見が出された。概要は次のとおり。
<東日本分科会>(司会=ユー・アンジェラ・上智大学副学長)
企業がグローバル人材育成に関して大学に期待することとしては、「教養教育の拡充や論理的思考力、グローバル・コミュニケーション力が身につくカリキュラムの構築」(上村成彦・ソニー人事部門副部門長)や「国際ビジネスの現場で戦う強い意志と覚悟が身につくような海外体験の提供」(田宮直彦・日立製作所人財統括本部人事教育部長)などが指摘された。他方、シンガポールから東京大学に留学したイヴォーン・ユー氏からは、外国人留学生の採用に関して、「新卒に偏った採用活動を見直し、学び直しのために大学院を卒業した学生や既卒の社会人経験者の採用を増やしてほしい」との要望があった。
産学共同の取り組みについては、(1)学生が論理的思考力やグローバル・コミュニケーション力、リベラル・アーツの知識の必要性を実感できるような共同講座や海外プログラムの開発(2)グローバル人材に求められる素質や能力について大学・企業・学生の三者間で定期的に議論する場の創設――などが提案された。
<西日本分科会>(司会=渡辺芳人・名古屋大学副総長)
企業が人材に求める素質として、「精神力・胆力を鍛え最後まで仕事を粘り強くやりきる力」(朝稲寛・トヨタ自動車人材開発部採用・計画室長)や「異文化・異なった価値観への理解」「タフであることと多様性を受け入れる力」(漆崎博之・SGホールディングス執行役員)などが挙げられた。また、九州大学在学中に中国とタイへの留学経験がある丸紅の古賀嵩氏は、「海外留学中、グループで論文を作成する課程を通じて文化や言語の壁を乗り越え、成果を出すために必要なことを学んだ」と述べ、「実体験にこそ、学びや気づきがある」と指摘した。
産学共同の取り組みとしては、(1)留学生が日本で就職しやすくするための採用方法の多様化(2)留学生に対するキャリアパスの提示(3)日本人学生のグローバル化に向け、企業活動のグローバル化の実態を大学と企業が連携して学生に情報発信すること(4)企業と大学が連携して、共同講座や国際的なインターンシップ・プログラムを開発すること――などが提案された。
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グローバル30事業は今年度をもって終了するが、今後もこれら提案の実現に向けて、経団連とグローバル30の採択13大学は引き続き、緊密に連携していく。
【社会広報本部】