経団連(米倉弘昌会長)は2日、都内で日本との交流400周年を機に来日したスペインのラホイ首相との懇談会を開催した。米倉会長、畔柳信雄副会長、大塚陸毅副会長、奥正之副会長、荻田伍副会長、佐々木則夫副会長ら経団連幹部が出席した。
冒頭、米倉会長から日・EU経済連携協定の早期締結に向けてのラホイ首相の理解を求めた。また、各副会長から投資・観光・食品・原子力の各分野における日本とスペインとの協力の可能性について言及があったほか、スペインの電力分野の改革が日本からの投資に及ぼすマイナスの影響に関し善処を求めるなどの発言があった。経団連側の発言に対する応答を含むラホイ首相の発言の概要は次のとおり。
■ 経済危機克服のため改革を断行
スペインは、経済危機からの脱却に向けてさまざまな改革に取り組んできた。まず、地方自治体を含めて財政赤字を削減すると同時に、財政運営の透明性の向上に努めてきた。その結果、現在、国債のリスクプレミアムはここ2年で最低の水準にある。また、国有化を含む金融機関の再編、公的資本の注入、外部監査の徹底を通じて、企業金融の円滑化を図った。さらに、起業等の支援、経済活動に関する障害の除去、雇用の柔軟性確保を通じた単位労働コストの低下によって、国際競争力が回復し、雇用も増加傾向にある。こうした国を挙げた努力がEUレベルの政策で補完されるべきである。
なお、今年7月に公表した電力分野の改革は、電力会社が破産寸前の状態にあるなかでのやむにやまれぬ決断の結果である。一定の料金引き上げで消費者が、制度変更で発電事業者が、国費投入で国が、それぞれ負担を分かち合うかたちで解決を図った。発電事業者には国内事業者も含まれており、外国企業にのみ負担を課すわけではない。
■ スペイン経済に回復の兆し
こうした取り組みの成果はすでに表れてきている。今年第3四半期の実質GDP成長率はプラスに転じる見込みである。先日、政府は2014年の成長率予測を0.7%に引き上げたが、これは控えめな数字である。成長の原動力となっているのは、好調な輸出であり、まだ拡大の余地がある。日・EU・米国が協力して自由貿易を推進していきたい。
■ 日西協力には大きな可能性
まず、中南米市場においては、日本とスペインが協働して事業展開していくことが可能である。また、スペインは各国から多くの観光客を受け入れている実績があり、日本も観光振興に取り組むなか、観光分野でも両国は連携できよう。さらに、食品分野は将来性が期待される、スペイン経済にとって重要な産業である。原子力に関しては、安全性等に関する理解を増進するための協力が必要である。
【国際経済本部】