経団連は13日、東京・大手町の経団連会館で、金融制度委員会(奥正之委員長)・企業会計委員会(釡和明委員長)合同会合を開催し、金融庁の桑原茂裕総務企画局長から、「金融資本市場制度・企業会計制度に関する諸課題」について説明を聞き、意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。
今年6月に総務企画局長に就任した。金融行政を通じて日本経済を成長軌道に乗せられるような環境づくりに、全力を尽くしていきたい。また、(1)中長期的展望に立った制度づくり・見直しを従来以上に行う(2)過去につくった制度が、所期の目的どおり機能しているかを、ゼロベースで再点検する(3)ビジネスの現場との双方向の対話を大事にする――という3点に取り組むことにより、「使われる制度」「役に立つ制度」づくりを行っていく。
現在、総務企画局では、主に以下の施策に取り組んでいる。
(1)新規・成長企業へのリスクマネーの供給
金融審議会に新たに設けた「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」において、クラウド・ファンディングを含めたリスクマネーの供給策、新規上場に伴う事務負担の軽減、上場企業の資金調達の円滑化等について、年内の取りまとめに向け検討を行っている。
一方、わが国において、リスクマネーが円滑に供給されていくためには、このような制度整備だけではなく、それらの制度が活用される前提としての「土壌」が整っていくことが重要と考えている。
(2)日本版スチュワードシップ・コード(機関投資家が受託者責任を果たすための原則)の策定
「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」において、年内のコード策定に向けた検討を行っている。日本版コードの策定にあたっては、単に英国のコードを直輸入するのではなく、企業の持続的成長に資するよう、わが国の実情に応じた、バランスの取れたものにすることが重要である。
また海外投資家等からも理解が得られ、日本の持続的経済成長の一つの基盤となり得るような、有意義なコードを策定する必要がある。
(3)国際会計基準(IFRS)をめぐる課題
企業会計審議会は今年6月に、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」を取りまとめ、三つの方針を打ち出した。
- (1)「任意適用要件の緩和」については、10月中の施行を予定している。
- (2)「修正版IFRSの作成」については、企業会計基準委員会(ASBJ)において8月下旬に検討が開始され、おおむね1年後の作業完了を予定している。
- (3)「単体開示の簡素化」については、例えば本表(貸借対照表、損益計算書等)に関し、会社法の要求水準に統一することを基本とするなどの方向で検討し、年内を目途に府令改正を予定している。
なお、IFRSの任意適用の拡大については、金融庁を含めオールジャパンで環境を整備していく必要があり、関係者と連携しながら取り組んでいく。
(4)ABL(動産・売掛金担保融資)をめぐる課題
金融庁はABLの普及を進めており、これまで経団連にも協力を要請してきたが、売掛金債権の譲渡禁止特約の解除に向けての柔軟な対応など、ABLのより一層の普及のために引き続き協力をお願いしたい。
なお局長からは、上記施策のほかに「日本取引所グループが取り組んでいる新株価指数」「公認会計士のあり方、会計監査の役割」「インサイダー取引規制に関連する法改正」等についても説明があった。
■ 意見交換
説明後の意見交換では、「金融商品取引法の単体開示の簡素化は経団連の積年の要望であり、対応をお願いしたい」との発言があった。これに対し局長からは、「経団連の提言もよく読んで対応したい」との回答があった。
【経済基盤本部】