経団連は16日、提言「インフラ・システム海外展開の機動的かつ戦略的な推進を求める」を取りまとめ公表した。
世界のインフラ需要は年間1兆ドル超と推計されており、今後も拡大が見込まれている。わが国の成長戦略としては、インフラ需要をめぐって激化する国際競争に打ち勝ち、海外のインフラ案件を積極的に受注していくとともに、それを通じて、わが国技術の海外への普及や新興国のビジネス環境の整備につなげていくことが重要な課題となっている。その実現のためには、インフラ輸出の主体である民間企業と政府との連携を一層強化していくことが求められる。
提言は、インフラ・システムの海外展開にかかわる経団連の重点要望事項を迅速性と戦略性の観点から整理したものであり、政府が3月に立ち上げた「経協インフラ戦略会議」や成長戦略などの政府の諸政策に経団連の考え方を反映させていくことを目的としている。
提言のポイントは次のとおり。
■ 機動的かつ戦略的な推進体制の確立
官民一体となったインフラ輸出戦略を推進する観点から、経協インフラ戦略会議においては、財政的視点のみに立つのではなく、わが国産業の国際競争力強化を含め、幅広い見地から関係省庁間の合意形成を図るべきである。その際、わが国企業のインフラ・システムの具体的な受注を通じて、わが国の成長を実現するとともに、資源安全保障等の国益実現の視点を一層強化する観点から、広域開発プロジェクトを積極的に設計・提案し、プロジェクトの上流段階から関与を図っていくべきである。
JICA(国際協力機構)、JBIC(国際協力銀行)、NEXI(日本貿易保険)等のインフラ輸出に関連する執行機関については、横の連携を密にし、対象となるプロジェクトを選別のうえ、包括的なインフラ海外展開支援を推進していくべきである。
■ 迅速かつ柔軟な資金供与
ベトナム、インドネシア、ミャンマー等の重点国や発電所、港湾、道路、上下水道などの重点分野、今後需要が見込まれるスマートコミュニティ、ICT、衛星、環境、防災、医療などの有望分野については、政府内の検討プロセスを効率化・迅速化するファスト・トラック制度を設け、円借款やJICA海外投融資をはじめとするODAが迅速に供与できる体制を整備すべきである。
円借款対象国の基準を大胆に見直すなど、円借款の柔軟化を行うとともに、わが国企業が海外のインフラ・システム案件を積極的に受注することが国際貢献につながるとの視点に立ち、円借款対象国の基準の大胆な見直し、返済利息を活用した低利特別円借款(タイド)、無償資金協力予算の拡充等を実現すべきである。
■ わが国技術・制度の戦略的な普及
インフラ・システムの海外展開を後押しするための、わが国企業が先端技術を有するインフラ分野における各種技術・規格での国際標準の獲得、わが国の技術を理解する層の拡大を図るための、人材育成等を通じた技術移転が必要である。
同様の観点から、相手国における法制度やインフラ関連制度の整備支援、オフセットメカニズムの導入も進めていくべきである。
■ トップセールスの推進と民間人材の活用
わが国の優れたインフラの定着を図るため、官民連携で相手国へのトップセールスを展開するとともに、日本に海外要人を招聘し、わが国のインフラ・システムをショーケースとして紹介し、理解を醸成していくべきである。
【国際協力本部】