21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎所長)は13日、東京・大手町の経団連会館で第99回シンポジウム「新政権のエネルギー・温暖化政策に期待する」を開催した。
同研究所では2007年以降、研究主幹に澤昭裕氏を迎え、わが国のエネルギー政策のあり方およびポスト京都議定書の国際枠組のあり方について、さまざまな報告書を発表するとともに、シンポジウムや討論会などで広く議論を提起している。
森田所長は開会あいさつで、「気候変動をめぐる国際交渉においては、各国の利害が対立し難航するなかで、産業界の技術の有効な活用や自主的な取り組みがいままで以上に注目されている」としたうえで、「エネルギー政策においても、必要以上に経済を劣後させることなく、原子力のあり方も含め、冷静な議論と決断がなされること」を要請した。
続いて、平将明経済産業大臣政務官を迎え、基調講演が行われた。平政務官は、「経済の再生、景気の回復を国民が政権に期待する最重要課題」としたうえで、エネルギー政策については「前政権のエネルギー・環境戦略をゼロベースで見直し、エネルギーの安定供給、エネルギーコストの低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築する」と強調。そのため、いかに安定的かつ安価にエネルギー源を「生産・調達」し、それを効率的に「流通」させ、スマートに「消費」していくかが重要と述べた。地球温暖化に関しては、日本の温室効果ガス排出量削減目標を今年11月のCOP19までにゼロベースで見直し、わが国の優れた技術で世界に貢献していく、「攻めの地球温暖化外交戦略」の重要性を強調した。
■ パネルディスカッション
続いて行われたパネルディスカッションでは、澤研究主幹をモデレーターに、齋藤健・環境大臣政務官、経団連副会長・環境安全委員会委員長の坂根正弘・小松製作所会長、ソフィアバンクの藤沢久美代表を迎え、研究プロジェクトの委員である山本隆三・富士常葉大学教授が加わり、活発な議論が展開された。
齋藤政務官は、地球温暖化国際交渉に関して、気候変動枠組条約のすべての加盟国は、カンクン合意に基づき2014年1月までに2020年削減目標とそのための施策を条約事務局に提出しなければならないことを説明。日本は技術で世界全体の温暖化対策に貢献するべきであり、最先端技術を世界的に普及させるための仕組みづくりが重要であると強調した。
坂根氏は、被災者支援を最優先し、化石資源を過剰消費してはならないという基本的な考え方のもと、日本のあるべき姿について、まずは成長戦略という大局に着眼し、それをもとにCO2、エネルギー、GDPなど小局に着手すべきであり、ばらばらに議論すべきでないと指摘。さらに、エネルギー問題も中長期と短期に分けて考えるべきと述べた。
藤沢氏は、グローバルな視点から、温室効果ガス削減に代表される「緩和策」だけでなく、気候変動の影響を軽減する「適応策」についても議論することが重要で、日本の技術を活用した貢献を世界に示していくことの重要性に言及した。
山本氏は、さまざまなデータをもとに、安定的で安価なエネルギーがないとデフレ脱却は困難であり、さらに新規の最新鋭の設備の導入や新工場の建設等が行われず、国内の省エネも進まないという分析について報告し、日本にしかできない技術を伸ばす努力を官民で進めるべきと述べた。
討議を通じて、温暖化政策に関しては国内の温室効果ガス削減対策のみならず、技術提供により世界の排出量を削減できる仕組みづくりが重要で、実績を積み重ねて国際交渉に入るべきということで意見が一致した。
シンポジウムの詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。
【21世紀政策研究所】