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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年3月14日 No.3123 水銀条約の制定をめぐる状況と日本政府の対応方針等について経産省、環境省と懇談 -環境安全委員会環境管理ワーキング・グループ

水銀による環境汚染と健康被害を防止する観点から、2010年からUNEP(国連環境計画)のもと、国際的な水銀規制に関する条約の制定に向けた政府間交渉が行われている。今年1月にジュネーブで実施された最終交渉の結果、水銀条約の条文ならびに、正式名称を「水銀に関する水俣条約」とすることが決定された。また、今年10月には、熊本・水俣両市において条約の採択・署名のための外交会議が開催される予定である。

そこで、経団連の環境安全委員会環境管理ワーキング・グループ(高澤彰裕座長)は、環境省(早水輝好・環境保健部企画課長、上田康治・環境安全課長ほか)と経済産業省(田村修司・製造産業局化学物質管理企画官ほか)からそれぞれ、2月14日、25日の2回にわたり、国際交渉の概要ならびに日本政府の対応方針等について、説明を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 条約の目的および水銀含有製品・製造プロセスへの対策

水銀条約の目的は、水銀および水銀化合物の人為的な排出から人の健康および環境を保護することである。一連の政府間交渉の結果、合意に至った条文では、締約国は原則として水銀含有製品(蛍光灯や血圧計、電池等)の製造や製造プロセスにおける水銀使用を禁止ないしは削減することが義務付けられた。

水銀の輸出にあたっては、条約上で認められた用途および環境上適正な保管に限定され、かつ輸入国の事前同意が必要となる。水銀廃棄物の一時保管等に関しても今後、条約発効後の締約国会議(COP)で作成されるガイドラインに基づき、環境上適正な一時保管ならびに水銀廃棄物の管理を行うこととされた。

■ 大気への水銀排出にかかる対策

条約上、石炭火力発電所、石炭火力産業用ボイラー、非鉄金属溶焼結施設、廃棄物燃焼処理施設、セメント製造施設が大気への排出の対象施設とされた。これら五つの分野の施設について、新規施設に対しては、利用可能な最善の技術(BAT=Best Available Techniques)と環境のための最善の慣行(BEP=Best Environmental Practice)の適用が義務付けられた。既存施設に対しても、(1)排出制御目標(2)排出限度値の設定(3)BAT・BEPの活用(4)他の有害物質制御の活用(5)代替的措置――の対策のうち一つ以上を条約加入後10年以内に実施することが決定された。

わが国でも、業界によっては、今後策定作業が行われるBAT・BEPへの対応が必要となると考えられるため、産業界と連携を取っていきたい。

■ 日本政府の今後の対応方針

同条約は、今年10月の外交会議で署名・採択された後、50カ国以上の批准が行われてから90日後に発効する運びである。事務局を務めるUNEPでは16年中の条約発効を目指すとしており、それまでの間にBAT・BEPに関するガイドライン策定に向けた作業等が行われる見込みである。また、日本を含め各国では、批准に向け、関係する法制度改正等の議論・検討が進められることとなる。

どのようなBAT・BEPガイドラインが想定されるのか、各々の業界内で十分な検討を行い、日本産業界の技術が反映されるよう対応を行っていくことが重要である(経済産業省)。

10月に熊本県で開催される外交会議は、わが国の優れた水銀対策技術を世界にアピールする好機。展示などの面で、産業界にも協力をお願いしたい(環境省)。

【環境本部】

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