経団連は12月14日、東京・大手町の経団連会館で企業行動委員会企画部会(吉田豊次部会長)を開催した。会合では、「公益通報者保護法の現状と今後の方向性」をテーマに、同法の検討に関わった早稲田大学法学学術院の島田陽一教授と、同法を所管する消費者庁の堀井奈津子消費者制度課長から話を聞くとともに、意見交換を行った。
<島田教授講演概要>
■ 公益通報者保護法と企業のコンプライアンス
公益通報者保護法は外部への通報や告発を推奨する法律ではない。政府では、民間事業者向けガイドラインを作成するなど、同法の普及に努めてきた。企業におけるコンプライアンスに対する意識の高まりと相まって、大企業を中心に、社内に通報を処理するヘルプラインの仕組みを整備する企業が増えている。
近時の判例では、通報者の名前を職場の関係者に知らせたことが問題となった。内部通報制度は従業員に信頼される制度であることが重要であり、企業は、公益通報の窓口担当者に十分な研修を行うなど、制度の適切な運用を徹底する必要がある。
■ 公益通報者保護法の今後の方向性
公益通報者保護法の対象を広くすべきという意見もあるが、法改正には改正に足る十分な立法事実が必要である。法の規定より広い範囲の通報を受け付けている企業も多い。その意味で、各企業のヘルプラインがどの程度機能しているか、その運用状況を見極める必要がある。ヘルプラインが適切に機能していれば、公益通報者保護法を強化する必要はない。同法の見直しの検討に対し、経団連をはじめ企業の経営者の意見を表明してほしい。
<堀井課長説明概要>
■ 消費者庁における取り組み
同法附則第2条を受け、施行後5年目の2010年度に、消費者委員会は施行状況について検討を行い、「政府に求められる事項」を取りまとめた。これを受け消費者庁では、制度の実態把握のための調査や周知広報等を積極的に行っている。すでに12月初めに、消費者庁から企業等へアンケート調査票を送付している。今後の制度の運用のあり方等を検討するうえでの重要な調査となるため、積極的に回答をお願いしたい。
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その後の意見交換では、海外の現地子会社も含め企業グループ全体として、内部体制やコンプライアンス規範を整備することが課題であるといった意見などがあった。
【政治社会本部】