経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)を開催した。当日は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の樋口清司副理事長から、同機構の取り組みおよび諸外国の宇宙政策について説明を聞くとともに意見交換を行った。なお、樋口氏は10月、世界の宇宙研究機関などが加盟する国際宇宙航行連盟(IAF)の会長に選出された。樋口氏の説明の概要は次のとおり。
■ 基本的認識
宇宙開発は、フロンティアの開拓、技術開発、安全で豊かな社会という三つのコンセプトから成り立っている。
7月に政府がまとめた「日本再生戦略」では、新産業や新市場の創出を図る方向性が出された。通信衛星などの宇宙インフラを利用してサービスを提供する産業にはポテンシャルがあり、イノベーションを創出できる。
宇宙利用を持続的に拡大するためには、技術基盤の強化および適切な市場規模の産業が不可欠である。
■ JAXAの今後の事業の検討状況
来年度からの5年間を対象とする中期計画にあわせ、JAXAでは今後の事業について検討している。具体的な分野としては、宇宙利用、宇宙輸送、国際宇宙ステーションおよび有人技術、宇宙科学、宇宙探査、航空、研究開発、スペースデブリ(宇宙ごみ)対策がある。具体的な事業を実施するために、産業界と連携してJAXAの予算を増加させたい。
■ 諸外国の宇宙政策
欧州では、ESA(欧州宇宙機関)が研究開発をし、EUが宇宙を利用するという役割分担をしている。次期基幹ロケットとして、現在のアリアン5を改良するか、新しいアリアン6を開発するかについて議論されている。
米国では、スペースシャトルを廃止したのに伴い、宇宙輸送に関して民間企業によるロケット開発への補助金を支出している。
ロシアでは、宇宙への投資と技術革新を怠ったため、ロケットの事故が相次いでおり、信頼性回復が大きな課題である。
中国は、国家発展の重要戦略として宇宙を高く位置付けている。
<意見交換>
「宇宙利用を通じて製造業を活性化させることが重要である」という委員の意見に対し、樋口氏は、「宇宙利用の促進は、省庁横断的にやらなければいけない。衛星データの利用を促進するための仕組みをつくる必要がある」と答えた。
【産業技術本部】