経団連(米倉弘昌会長)は「企業倫理月間」の一環として10月29日、大阪市内で約200名の参加者を得て、第6回関西企業倫理セミナーを開催した。
開会にあたり、企業行動委員会の吉田豊次企画部会長から、企業倫理を徹底すべく、経団連の企業行動憲章・同実行の手引きを参考に、グループ企業も含め、事業活動全般の総点検を行うとともに、体制を強化するよう呼びかけた。
引き続き、成和明哲法律事務所の土岐敦司弁護士が「企業倫理の徹底と内部体制の構築」をテーマに講演を行った。土岐氏の講演概要は次のとおり。
真に「会社のため」とはなにか
■ 企業倫理の徹底と内部体制の構築
近年、株主のガバナンスへの姿勢の変化や企業不祥事が多発していることなどを契機に、内部統制システムの強化が求められている。しかし、経営者自身が関与した不祥事は、内部統制システムだけでは防げない。経営者を含め、企業倫理の徹底を図るべきである。
企業倫理徹底のため、第1に、コーポレートガバンスの強化が必要である。不祥事を事前に防止するため、意思決定のプロセスを可視化し、事後的に検証可能なものにすべきである。
コーポレートガバナンスの担い手として、最も重要なのは取締役である。取締役は、雇用者の指揮命令に従えばよい従業員とは異なり、委任契約に基づき、裁量権を発揮して、取締役会で責任を持って発言するなど、監視・監督機能を果たすことが求められている。また、会計監査人との連携強化や経営者にものが言える社外監査役の採用など、監査役による監査の実効性向上も重要である。
第2に、企業トップが社会的な規範の遵守も含め、企業倫理の徹底を重要事項と認識していることを企業理念として公表する必要がある。また、コンプライアンス体制を確立したうえで、常に検証を行い、ブラッシュアップすべきである。さらに、コンプライアンス・プログラム(行動指針)を現場と共同で作成し、解釈の必要がないよう、具体的になすべきことをわかりやすくまとめるべきである。
近年、内部告発から不祥事が発覚することが多い。内部告発により企業は多大な打撃を受ける。適切な通報窓口の設置など、内部通報制度を充実させ、企業が内部通報に適切に対処することで、逆に企業の評価を高めることが可能である。社員は自社に自浄能力があると期待しているからこそ、内部通報を行う。内部通報を否定的にとらえるべきではない。
企業不祥事が起こると当事者は、「隠ぺいをしなければ企業が破たんする」との幻想を抱き、「会社のためにやった」と必ず言う。しかし、法的手段を講じることで会社の存続は可能なはずである。本当に「会社のため」とはなにか、いま一度意識すべきだ。
【政治社会本部】