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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年11月1日 No.3107 「日本経済の行方とこれからの成長戦略のあり方」聞く -法政大学の小峰教授から/経済政策委員会企画部会

経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)は10月12日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、法政大学大学院政策創造研究科の小峰隆夫教授から、「日本経済の行方とこれからの成長戦略のあり方」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

1.今こそ経済成長の意義を再評価すべき

経済成長は七難を隠す。すなわち、経済成長によって困ることはなく、むしろさまざまな良いことが出てくる。例えば、成長によって所得が増え、企業の利潤も上がるため、雇用機会が増える。また、資源配分が容易になるため、構造改革も進みやすくなる。さらに、経済のパイの拡大によって社会的不満も小さくなるなど、良いことずくめであり、成長力の強化は非常に重要である。

2.政府の成長戦略の評価

2010年6月に取りまとめられた「新成長戦略」や、今年7月の「日本再生戦略」では、名目3%、実質2%の経済成長率が目標として掲げられた。しかし、成長は民間企業の活動によって生み出されるものであり、政府がコントロールできるものではない。こういったマクロの数字ではなく、例えば「(新薬における)ドラッグラグを何年以内に短縮する」といった、自らがコントロール可能な施策について、政府は具体的な数値目標を示すべきである。

また、「日本再生戦略」では、「グリーン」や「ライフ」など、重点分野へ優先的に資源配分を行うとしているが、こういったターゲティング・ポリシーは後追いであることが多いうえ、政策資源を大胆に集中することで、大胆に間違えてしまう可能性もある。政府が果たすべき役割は、民間企業の新規参入を促し、新市場が創出されるような環境を整備することである。

国民に負担を強いるような政策は厳しい批判にさらされるため、「日本再生戦略」では、当たり障りのない項目が掲げられている。しかし、「エネルギーの安定供給策」「医療・介護の制度改革の方向性」「TPP(環太平洋経済連携協定)への対応」という三つの重要施策に関する記述が不十分な点は問題である。

3.自民党の成長戦略の評価

民主党の成長戦略が国民生活重視であるのに対して、自民党の成長戦略「日本経済再生プラン」は、企業活動重視のスタンスを打ち出している。国民生活を充実させるためには、経済の基盤である企業活動を活性化させるべきであり、この点については評価できる。

しかし、成長戦略の大きな柱として据えた「国土強靭化基本計画」には問題がある。事前防災・減災等に資する事業計画を国が策定し、地方がそれに従うこととなっており、地域主権改革の流れに逆行する。また、公共投資主導による経済成長を志向している点も問題である。公共投資を行う過程で需要は喚起されるが、継続性がない。財政赤字を増やすだけで、持続的な経済成長にはつながらない。

4.成長戦略をいかにつくるべきか

政権が代わるたびに、政策が「使い捨て」にされている。いまこそ、かつての経済審議会で取りまとめていた経済計画の役割を見直すべきではないか。多くの専門家によるチェックを経て、理論的な整合性がとれた実現可能な計画案をもとに、学界、産業界、労働界、消費者など各界を代表する有識者が議論を繰り返すことにより、国民的なコンセンサスが形成されていた。経済計画は、極端な政治主導でも、官僚主導でもない、合意形成の一つの手法であった。先人の知恵を活用することが、いま求められる。

【経済政策本部】

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