経団連の企業行動委員会社会的責任経営部会(鍛治舍巧部会長)は、10月16日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。
会合では、廣野良吉成蹊大学名誉教授を招き、社会的責任をめぐる国際的な動向と今後の方向性について、国連持続可能な開発会議(「リオ+20」)での議論も踏まえ、「持続可能な地球社会の構築における企業の役割」と題する講演を聞いた。また、同じく「リオ+20」に参加した、損害保険ジャパンの関正雄理事から、企業・経済界の観点から意見を聞いた。
両氏は、持続可能な社会の発展に向けて企業の存在感が高まっており、技術やノウハウ等を活用したさらなる貢献が期待されていると指摘した。
廣野氏、関氏の説明概要はそれぞれ次のとおり。
<廣野成蹊大学名誉教授>
■ 世界経済の構造的変化
1990年以降、東アジアを中心とする新興国は、著しい経済成長を遂げている。経済のグローバル化が進展する一方、先進国の相対的地位が低下するなど、国際社会における地位も変化しつつある。
■ リオ+20での議論
リオ+20においては、持続可能な社会の発展に向けて、地球生態系環境課題(気候変動、生物多様性、資源等)と人間社会的課題(貧困、人権、失業等)の双方について、さまざまな議論が展開された。諸課題の解決に向けて、多様な主体の取り組みが必要である。なかでも、先進国政府の財政赤字は拡大しており、企業を含む民間セクターに寄せられる期待が大きくなっている。
■ 企業に期待する対応
企業においては、製品開発、原材料調達等を通じて、地球的課題の解決に向けた取り組みを進めてきた。NGOや市民社会からの強い意見も踏まえ、とりわけ多国籍企業でその傾向が強い。一方、中小企業では地球的課題への配慮が遅れているなど、規模や業種等による差異がある。
地球的課題の解決に向けて企業は、自らの利益だけでなく、事業展開する各地の地域益や国益、地球益に貢献すべく、自らが持つ技術力やノウハウ等を積極的に活用していくことが重要である。
<関損害保険ジャパン理事>
■ リオ+20における企業セクターの議論
リオ+20の成果文書において、CSR、とりわけ情報開示の重要性が指摘されるなど、企業の取り組みへの関心は高まっている。また、企業セクターの会合では、持続可能な社会の発展のための多様な課題を議論し、企業の取り組みや他主体との協働による取り組みを拡大する必要性が指摘された。
■ 今後、企業に求められる対応
深刻化する地球規模の課題解決に向けて、新たなグローバル・ガバナンスを構築する必要がある。そのような認識のもと、企業・経済界には、取り組みの規模拡大や加速化が求められる。さらには、統合報告(注)や自然資本など、持続可能な発展の主流化に向けた新たなテーマにも関心が高まっており、わが国企業にもそうした国際動向を踏まえた対応が求められる。
(注)統合報告=収益や資産などの財務情報と環境や社会貢献への取り組み、企業統治に関する情報などの財務情報を関連付けて統合した報告
【政治社会本部】