産学官の連携の強化・推進を目的に、政府・関係機関と経団連が主催する「産学官連携推進会議」が9月28日に都内で開催され、産学官から約1000人が出席した。同会合は今年度で11回を数える。
■ 講演・パネルディスカッション
会議では、内閣総理大臣メッセージを皮切りに、インターメタリックスの佐川眞人社長が「ネオジム磁石の発明と工業化」、科学技術振興機構の中村道治理事長が「ホログラフィー電子顕微鏡の開発と未知への挑戦」をテーマに特別講演を行った。
続いて、産学官連携の事例報告として、まず東京大学生産技術研究所の荒川泰彦教授が、自身が中心研究者を務める最先端研究開発支援(FIRST)プログラムの成果と、30年来の研究成果である量子ドットレーザーの実用化状況を紹介した。続いて東京女子医科大学先端生命医科学研究所長の岡野光夫教授は、細胞シートの実用化により再生医療が画期的に進歩し、体のさまざまな部位の治療現場に浸透しつつある様子を紹介した。
公務の関係で午前中の最後に登壇した古川元久科学技術政策担当大臣は、「第4期科学技術基本計画」の、この1年の成果と課題について基調講演を行った。古川大臣は、産学官の幅広い関係者が連携して戦略づくりを行う「戦略協議会」を総合科学技術会議の下に新設し、同協議会を中心に、次年度予算の重点化に向けたアクションプランと重点パッケージを策定したことを説明した。また今後、総合科学技術会議の司令塔機能強化のための法案提出を目指していると述べ、産学官連携による科学技術イノベーション推進の重要性を強調した。
また、古川大臣は、経団連をはじめ民間からイノベーションに特化した複数の提言が今年春に公表されていることに触れ、各提言とも共通して「国としての戦略」「強い政治的意思とリーダーシップ」「規制改革」「評価への産業界の参加」「府省連携」「税制優遇」「人材育成」を指摘しているとの認識を示した。
午後は「科学技術イノベーションの実現のために」をテーマに、産学官の有識者によるパネルディスカッションが行われ、活発な討論が行われた。
■ 経団連会長賞表彰
大学、研究機関、企業等の産学官連携活動において、産学官連携の推進に多大な貢献をした事例を表彰する産学官連携功労者表彰では、内閣総理大臣賞をはじめ11の賞が14事例に付与された。その一つ、日本経済団体連合会会長賞は、「『1700℃級ガスタービン冷却技術』の開発」に顕著に貢献した三菱重工業の伊藤栄作氏、塚越敬三氏、大阪大学教授の武石賢一郎氏が受賞した。同技術は、火力発電所の熱効率向上・環境負荷低減につながるものであり、1600℃級ガスタービンの実現ならびに1700℃級ガスタービンの実用化を可能とするフィルム冷却技術の開発に産学官連携で成功したことが評価された。
【産業技術本部】