経団連の少子化対策委員会(前田新造委員長、伊藤一郎共同委員長)は9月26日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、伊奈川秀和・内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官ら政府担当者から、先の通常国会で成立した子ども・子育て関連3法の概要や事業主拠出を原資に運営する児童手当・児童育成事業の現状を聞いた。
まず、伊奈川審議官から、子ども・子育て支援にかかる包括的な制度の仕組みや施行に向けた今後のスケジュールについて、説明があった。
■ 子ども・子育て関連3法について
子ども・子育て関連3法は、民主党、自民党、公明党の3党合意に基づく修正を経て、8月10日に可決・成立した。主な修正点は、(1)「総合こども園」の創設は見送り、従来からある認定こども園制度を改善し、幼保連携を推進する(2)保育所の認可要件を明確化し、認可を受けやすい環境を整えて保育需要に対応する――等である。また、消費税率引き上げによる財源を含め1兆円超が必要であり、政府は、その確保に最大限努力することを3党間で確認し、その趣旨が子ども・子育て支援法の附則に盛り込まれた。
なお、認定こども園・幼稚園・保育所を通じた共通の給付および小規模保育等への給付の創設、市町村による保育基盤の計画的整備、事業主拠出等を含む費用の負担構成など、政府で検討をしていた制度の大枠は変わっていない。また、2015年10月とされている消費税10%への引き上げ時期を踏まえて本格実施することを想定しており、来年度から子ども・子育て会議の設置や市町村の事業計画の策定等、施行に向けた準備を段階的に進めていく。
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続いて、厚生労働省の杉上春彦・育成環境課長、高橋和久・児童手当管理室長から児童手当・児童育成事業の現状について説明があった。
■ 児童手当・児童育成事業の運営状況について
政権交代後、児童手当は名称も含め変遷したが、3党合意を踏まえて、今年4月、検討規定を置いたうえで、支給額、費用負担、所得制限等の枠組みの恒久法が成立し、施行されるとともに、事業主が拠出金率等について意見を申し出ることができる旨も規定された。2013年度の概算要求(給付総額)は、児童手当が2兆2492億円(対前年365億円減)、児童育成事業が659億円(対前年26億円増)である。
政府では、子育て支援にかかる施設を拡充する計画(子ども・子育てビジョン)のもと、数値目標を設定しており、児童育成事業のなかの放課後児童対策等についても政府目標に沿って予算を計上した結果、今年4月から引き上げた事業主拠出率(1.3→1.5‰)を引き続きお願いすることとなった。なお、子ども・子育て支援法では、拠出金率の上限を1.5‰と法定し、対象事業も両立支援にかかる事業に限定した。今後、事業内容を整理し、新制度へ移行していく。
<意見交換>
続いて行われた意見交換では、「待機児童の解消が最優先課題であり、現金給付の予算は縮減し、保育サービスに充てるべき」「幼保連携型施設への株式会社の参入制限は残念。競争環境のないところに保育の質向上は期待できない」「政府で放課後児童対策等の数値目標を一方的に決め、事業主に負担増を強いるのは問題」との意見があった。これに対し、「待機児童対策は、保育所の認可の改善や市町村による保育需要の把握がカギとなるので、事業計画の策定に向け、自治体への説明や協議等の準備を丁寧に進めていく。また、施策の具体化にあたり、今後は子ども・子育て会議に諮りつつ、現行制度からの円滑な移行を進めたい」との考えが示された。
【経済政策本部】