経団連は14日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンターの加藤泰浩教授を招き、海洋におけるレアアースの開発について説明を聞くとともに意見交換を行った。加藤教授の説明の概要は次のとおり。
■ レアアースについて
元素の周期律表における57~71の15元素を一般的にレアアースという。質量によって軽レアアースと重レアアースに分類されるが、飛躍的な性能向上を図る観点から重レアアースの方が産業にとっては重要である。レアアースは磁気特性や光学特性を有することから、省エネ・エコ技術、液晶テレビ、宇宙産業、軍事技術などに必須である。
レアアースの機能は特殊な電子配置によるものであることから、レアアースの代替材料を開発するのは不可能である。また、リサイクル技術の開発は難しく、陸上のレアアース鉱床の多くは軽レアアース鉱床であるため、重レアアースの新規鉱床の開発が望まれる。
中国は重レアアースの生産を独占しており、輸出制限を外交カードとしている。2010年、中国がレアアースの輸出を制限すると、日本のみならず欧米にも影響を与えた。
■ 太平洋のレアアース
海底鉱物資源として太平洋のレアアース泥を発見したことについて英国科学誌に論文を掲載したところ、昨年7月4日に日本のみならず海外でも大きく報道された。
タヒチ沖やハワイ周辺の海域のレアアース泥は、重レアアースの含有量が高い。また、レアアース泥の特長として、資源量が膨大であること、他の海底鉱物資源に比べて開発が容易であること、開発の障害となる放射性元素をほとんど含まないことなどが挙げられる。
■ 南鳥島のレアアース
日本の排他的経済水域でレアアースが期待されるのは南鳥島周辺しかない。南鳥島を載せたプレートはタヒチ沖からハワイ沖を経由して、1億2千万年かけて現在の位置に至ったものである。
レアアース泥の資源価値としては、1日1万トンを採取し、年間300日操業して、300万トンの泥を引き上げれば、回収できるレアアースの量は日本の年間消費量全体の10%を占める。現在の価格では700億円になり、これを基に数兆円規模のハイテク産業を興すことができる。また、中国からレアアースを輸入する際も価格交渉で有利に立てる。
<意見交換>
山脇部会長が「レアアースの探査はすぐ行うべきであり、次期海洋基本計画に入れるべきである」と述べたのに対し、加藤教授は「南鳥島にレアアース泥があるのは間違いないが、5千メートルより深い海底にあるので、地球深部探査船『ちきゅう』を使って探査したい」と答えた。
【産業技術本部】