経団連は11日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会企画部会(岩波利光部会長)を開催し、文部科学省高等教育局高等教育企画課の浅田和伸課長から、大学改革に向けた政府の取り組みと産業界への期待について説明を聞くとともに、懇談した。
■ 社会の変化に対応した大学改革
浅田課長はまず、6月に公表された大学改革のビジョンをまとめた「大学改革実行プラン」について、「その柱は社会の急激な変化に対応して大学の機能を再構築することであり、そのために、大学のガバナンスを強化することにある」と説明。具体的には「主体的に学び、考える人材を育成するため大学教育の質的変換を図ること」「知識の量だけでなく意欲や能力などを総合的に判断するため大学入試を改革すること」「グローバル化に対応できる人材を育成すること」が主な内容となっていると紹介した。そのうえで、入試改革については、「大学入試自体が学習のゴールではないので、試験内容そのものを大学での学びにつながるものにしなければならない」ことを指摘、グローバル化への取り組みについては、「双方向の学生交流を拡大する必要がある」と述べた。
続いて、8月に公表された中央教育審議会大学分科会の答申内容についても触れ、「社会のニーズを踏まえて学士教育を質的に変換するためには、現状の教員中心の授業科目の編成から、学位プログラムとして組織的・体系的な教育プログラムに転換させること」や、「高等学校における教育と大学教育との接続」「就職活動の早期化・長期化の是正を含む、大学と社会との接続」を改善する必要があることを説明。前者については、入試改革を含め、新たに中教審に特別部会を設けて検討すると述べた。
■ 大学での学びを評価する必要性
続く意見交換では、経団連側から「大学教育の質を改善するためには、大学教員の教育力を向上させる必要があるのではないか」と指摘したのに対し、浅田氏は、「今回の答申でも、教員のFD(授業内容・方法改善のための組織的取り組み)の必要性については指摘されているが、問題は、教育が大学教員の評価対象となっておらず、一般の大学教員の意識が低いことにある」と説明した。
さらに、「一般に企業の採用活動では、総合的な人間力を評価するため、大学における学修内容より、クラブ活動などが重視される傾向にあることをどう思うか」と質問したのに対し、同氏は「日本の大学が送り出す学生の質を高めるためには、社会の側が大学での学修を評価する必要があり、企業側から大学における学びも不可欠というメッセージを発信してほしい」と述べた。
【社会広報本部】