経団連は7月13日、東京・大手町の経団連会館で、住宅政策委員会企画部会(立花貞司部会長)を開催し、来賓の米山秀隆・富士通総研経済研究所上席主任研究員から、わが国の住宅市場・住宅産業の現状や目指すべき将来像、住宅政策のあり方等について説明を聞いた。米山氏の説明の概要は次のとおり。
■ 住宅市場の現状と課題
わが国の新設住宅着工戸数は、金融システム不安や建築基準法改正、リーマンショックなどといった大きなショックを受けるたびに大幅に減少し、ショックの後も水準が回復しない状態を繰り返してきた。その結果、1990年度に160万戸以上あった新設住宅着工戸数は、直近では80万戸台まで減少している。
一方、空き家は、2008年時点で空き家率13.1%、757万戸となっており、増加傾向が続いている。また、わが国の住宅は品質が向上し、長寿命化していることを踏まえれば、今後は空き家を含めた中古住宅をどのように活用していくかが課題となる。国土交通省は今年3月に「中古住宅・リフォームトータルプラン」を策定し、既存の住宅ストックの活用に向けた取り組みを進めているが、これに加えて、今後は税制や補助金によって中古住宅を選択する際のメリットを高める施策の検討も必要となるだろう。
こうしたなか、近年、40歳未満の若い世代を中心に、中古住宅を購入してリフォームする人の割合が高まっている。中古物件の質が向上していることに加え、物件探しからリフォーム、リフォームローンまで対応するワンストップサービスも登場していることが背景にあると考えられる。今後もこうした動きはさらに広がっていくだろう。
他方、子育て世代など若い世代が100平方メートル未満の狭い家に住む一方で、65歳以上の高齢者が100平方メートル以上の広い家を持て余しているなど、住宅のミスマッチも生じている。高齢者が持つ広い家を住宅流通市場に供給することで、こうしたミスマッチを解消するとともに、諸外国との比較で圧倒的に狭い日本の借家の面積も広くすることができる。そのためには、広い持ち家の賃貸化を促進することが必要である。例えば、定期借家制度において借主が有している中途解約権を排除することによって、定期借家物件の長期契約を可能とするなど、物件の流動化を図るための施策が必要となる。
また、マンションのストック戸数増加に伴い、老朽マンションの処理、再生も課題となっている。REIT(不動産投資信託)などが老朽マンションを買い取ってリノベーションして賃貸化するなど、外部資金を活用して再生することが考えられる。こうした取り組みを通じて新たなビジネスチャンスが生まれ、日本の借家面積を広くすることが可能となる。
■ 住宅に対する消費税の考え方
消費税は、本来フローベースの付加価値に課すものである。一方、住宅は長期にわたって利用される耐久消費財である。このような性格を持つ住宅の売買に消費税が課されるのは論理的に説明が難しい。また、付加価値税の基本税率が高い海外においては、住宅に関して軽減税率や非課税の措置が取られている。
こうした点を踏まえれば、将来的に、わが国の消費税率の引き上げが見込まれるなかにあっては、軽減税率や還付の検討が求められるだろう。今後は、不動産取得税等との整理も含めて、さらに、住宅に関する税制の議論を深めていく必要がある。
【産業政策本部】