G20ビジネス・サミット(B20)が17、18の両日、メキシコのロスカボスで開催され、経団連からは西田厚聰副会長が参加した。
昨年11月のフランス・カンヌでのB20同様、欧州債務危機が影を落としたうえ、保護主義の圧力も増すなか、B20組織委員会のラミレス委員長は、「世界経済の回復の足取りは弱い一方、直面している課題は大きくかつ複雑であり、政府だけでは問題の所在を突き止め、解決策を提示することは不可能」であるとし、ビジネスの最前線からの想像力に富む具体的な提言の必要性を強調した。
政府側からも、カルデロン・メキシコ大統領が、B20後も「引き続き政治のリーダーを正しい方向に導く必要がある」と発言したほか、「実行を担保するには、ビジネスの現場にいる経済界が役割を果たすことが必要」「B20はG20に対して優先事項を直截に提言すべき。信頼を回復するために必要不可欠なツールを有しているのはビジネス」など経済界への期待が聞かれた。
西田副会長が参加した貿易投資に関するタスクフォースには、エルドアン・トルコ首相が参加した。冒頭、タスクフォース側から、(1)G20サミットにおける貿易投資の恒久議題化(2)高まる保護主義への対抗(3)複数国間アプローチ等を通じたWTOにおけるルール策定・自由化の促進(4)個別分野に関するWTO交渉の促進(5)投資に関する予測可能な安定的な枠組みの構築(6)投資を成長・雇用につなげるための作業部会の設置――の6項目の提言が紹介された。これに対しエルドアン首相は、(1)貿易投資は各国経済の回復、世界経済の繁栄に不可欠(2)貿易と投資は相互補完的であり、貿易のみならず投資の促進も必要(3)G20サミットでは毎回、保護主義の問題を取り上げてきたが、引き続きこれに対抗していくことが重要――と応じた。
意見交換においては、経済界側から、貿易円滑化に関して早期の成果を求める発言があったほか、西田副会長からは、(1)WTOを中心とする多角的な自由化へのモメンタム(勢い)を維持すべく、経済全体への波及効果も大きい分野において、複数国間の自由化合意を推進する必要がある(2)WTO体制の下で最も大きな成果をもたらしたと言える複数国間合意として情報技術協定(ITA)があるが、協定に参加していない国々の関税は依然として高いことに加えて、目覚ましい技術進歩の結果が反映されていない(3)ITAの参加国を増やし、また、関税撤廃の対象製品を拡大することによって、IT製品の国境を越えた流通を促し、それらが必要な時に十分活用できる環境を整える必要がある――と指摘、できる限り速やかにITA改定交渉を進め、早期妥結につなげることが重要と主張した。
以上のほか、ラミーWTO事務局長は、貿易投資の自由化が後退している現状を「悪玉コレステロールがゆっくり静かに蓄積されており、世界経済に次第にマイナスの影響を与えるようになる」と表現し、各種政策メニューを行動に移す必要性を強調した。ゼーリック世界銀行総裁は、合意形成が期待される分野としてITA、クリーン技術、サービス、貿易円滑化を挙げた。
【国際経済本部】