経団連は10日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、放送大学の來生新副学長・教授を招き、排他的経済水域および大陸棚の管理について説明を聞くとともに意見交換を行った。
概要は次のとおり。
■ 陸と海の管理について
まず、陸と海の管理について比較したい。陸では土地の私的所有権が細かく存在し、所有権者には空間を使用して収益を上げたり、処分したりする自由があり、市場機能が働く。地方公共団体や国が空間管理の権限を持ち、特に地方公共団体は都市計画等の権限を有する。
これに対して原則として、海の管理は国有であり私的所有権が存在せず、市場機能が働かない。個別の法律により点と線のように管理されているだけであり、一般海域には管理者が存在しない。
■ 日本の海洋管理法制の現状
排他的経済水域および大陸棚法は、国連海洋法条約で沿岸国に与えられた管轄権に国内法を適用するための法律である。しかし、昨年改正された鉱業法など一部の法律を例外として、多くの法律は陸上での適用を前提としている。
海洋基本法に基づいて総合海洋政策本部が設置され、政治的な意思決定を統合するメカニズムができたことは大きな変化である。今年度に海洋基本計画が見直されるが、総合海洋政策本部が実質的に省庁の縦割りをどう克服するかが大きな課題である。
現行制度では、個別法による省庁の縦割りの管理が行われており、空間管理や総合的な視点が欠けている。
■ 今後の課題と方向性
一般海域管理法を制定し、領海内や一定の沖合までは地方公共団体の区域とすべきである。それ以遠の海域は国の管理の対象として、総合的な管理主体を創設して権限を明確にすべきである。
新法を制定する際の方向性としては、計画権限と規制権限を分けて、新たな管理主体が空間を管理する計画を策定し、これに沿って各省が個別の法律で規制をすべきである。
<意見交換>
山脇部会長が、「総合海洋政策本部の機能を強化するにはどうすればよいか」と質問したのに対し、來生副学長は、「法改正により、総合海洋政策本部に今の調整権限より強い権限を与えることや、計画権限を持つ新しい組織を創設することなどが考えられるが、どの調整の仕方でも政治的コストが大きい」と答えた。
【産業技術本部】