経団連は11日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会(野間口有委員長、足立直樹共同委員長)を開催した。委員会では、知財をめぐる最新の動向と研究開発プラットフォームのあり方について、渡部俊也東京大学先端科学技術研究センター教授から説明を受けた。
説明の概要は次のとおり。
■ 知財をめぐる最新の動向
米国においては、プロパテント(注1)政策が推進されてきたが、近年は、イノベーション促進の観点での見直しが進められている。こうした考え方は、最高裁の判決にも反映されつつあり、昨年は、特許法の大幅改正も決定された。
韓国をはじめ海外においては、自国の産業を保護するため政府の資金により特許を買い集める「知財ファンド」を設立する動きがある。こうした政府系のファンドは、国際的に頻発する知財訴訟に対し自国の企業を守るとの目的がある一方、国家間での知財紛争を増大させる懸念のほか、新興国のプレゼンスの増大等、さまざまな影響を及ぼす可能性がある。
現在の知財制度の基本的な考え方は、500年以上前にイタリアのベニスで制定された世界初の特許法とほぼ同一であるが、権利を付与する対象技術領域の拡大や、権利を相互に活用しあって新しい技術の創造・普及を図る「オープン化」の流れ等、知財をめぐる動向は時代とともに変化している。企業は、こうした変化を読み解いたうえ、収益を生む知財戦略を立案する必要がある。
■ 研究開発プラットフォームのあり方
政府資金によって推進する国の研究開発プロジェクトには、産学の複数の組織体が関与する。そのプラットフォームの一例が、複数の組織体が事業で生み出した知財の実効的な管理を行う技術研究組合制度(注2)である。
技術研究組合の成功のカギは、プロジェクトの目的に沿った参加メンバーを厳選することや、「日本版バイドール制度」(注3)を戦略的に適用すること等にある。
■ 企業の知財ビジネスモデル運動の振興
わが国企業から、収益性の高い現場発の知財ビジネスモデルが数多く生まれることを大いに期待しており、アカデミアとしても、知財学会の活動等を通じて、その振興に貢献していく。
(注1)プロパテント=特許権をはじめ知的財産権全般の保護を強化する考え方
(注2)技術研究組合制度=2009年に新たに創設された制度。研究開発終了後も、技術研究組合が会社に組織変更し、研究成果をそのまま事業化することが可能となった
(注3)日本版バイドール制度=政府資金による研究開発から生じた特許等の権利を、受託者である企業等に帰属させる制度
【産業技術本部】