経団連は16日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会企画部会(岩波利光部会長)を開催し、東京大学の清水孝雄理事・副学長から、東京大学の秋入学への移行に向けた課題と産業界への期待について聞いた。清水副学長は、昨年4月に発足した同大学の「入学時期の在り方に関する懇談会」の座長を務めており、今年3月29日に秋入学移行に関する報告書を取りまとめて濱田純一総長に提出した。
清水副学長は、報告書に基づき、東大が秋入学を検討するに至った問題意識や秋入学移行の意義、今後の課題を説明したうえで、産業界に対し、「春季一括採用を見直し、より柔軟な採用方法について検討してほしい」「ギャップ・タームにおける学生の体験活動を充実させるため、体験活動を推進するための枠組みへの参加や、国内外でのインターンシップ機会の提供で協力してほしい」との期待を述べた。
続く意見交換では、経団連側から、「大学入学予定者のギャップ・タームにおける体験活動への協力は、企業にとっても、これまで経験のないチャレンジであり、高校を卒業したばかりの学生に何を体験させたらよいのか、大学と企業で具体的な検討を進めたい」との指摘があった。これに対し清水副学長からは、「18~19歳の学生に見せておくべきものは多く、専門分野に進む前の学生に見せたいこと、経験させておきたいことを産業界と一緒に考えていきたい」との回答があった。
また、経団連側の「有名国立大や私立大の学生は、比較的裕福な家庭の子どもが多いが、地方の国立大などの場合、経済的状況が厳しい家庭も多いため、秋入学によって実質的に卒業までの年限が伸びることによる経済的負担をいかに支援するかを検討すべきである」との意見に対しては、「東大でも年収400万以下の家庭も増えており、学生の能力に応じた経済的支援を行えるような仕組みが必要であると考えている。例えば、ギャップ・タームを有効に過ごした学生に対しては授業料を免除するような制度も考えられる」と回答した。
経団連側の「今回の東大案には、ギャップ・タームの導入という本来の大学教育とは直接関係のないものが含まれている。ギャップ・タームは、いわば付録のようなものであり、秋入学の導入に向けて、初等中等教育を含めて教育システム全体を改革することを考えてはどうか」との意見に対しては、「検討会の議論でも、初等中等学校から全体を秋入学に移行させるべきであるといった意見や、大学の入試時期をより気候の良い6月から7月に移行すべきといった意見もあった」ことを紹介、「今後5年以内に秋入学を実現するという目標を考えると、全体を改革するのは困難であり、より現実的にギャップ・タームを入れて秋入学を実施する方法が選択された」との説明があった。
【社会広報本部】