経団連は17日、提言「『イノベーション立国・日本』構築を目指して」を公表した。提言は、政府の国家戦略会議で年央に取りまとめ予定の「日本再生戦略」に向け、経団連の考えを示したもの。概要は次のとおり。
1.基本認識
(1)岐路に立つ日本と『イノベーション立国』の重要性
グローバル競争が熾烈を極めるなか、わが国の国際競争力を強化するためには、これまでのわが国の強みである「ものづくり力」を維持・強化するとともに、サービス産業やICT等との融合を図ることで、新たな価値を創造する「イノベーション立国」の構築を目指すことが重要である。
(2)イノベーションのフロンティア
わが国が世界に先駆けて直面している重要課題である、「資源・環境・エネルギー制約の克服」「高齢化に対応した健康長寿社会の実現」「安全・安心な経済社会の構築」の三つの戦略分野にリソースを重点配分することにより、新産業・新市場を創出すべきである。また、課題解決モデルをパッケージ化し海外に展開することで、国際貢献と成長を結び付けることが必要である。企業は斬新な発想とビジョンのもと、最先端技術と新規アイデアの組み合わせにより、従来にない市場の創造に向けた取り組みを強化することが求められる。
(3)産業界の取り組み
イノベーションの牽引役である産業界は、国内外の優れた企業や研究者等とのオープンイノベーションによる研究・技術開発力の強化や、戦略的なビジネスモデルの構築を主体的に進める。2010年12月公表の「サンライズ・レポート」の「未来都市モデルプロジェクト」の推進をはじめ、産業界主導の活動をさらに強化し、「イノベーション立国」の構築に主体的役割を果たしていく。
2.未来を切り拓くイノベーション推進策
イノベーションの牽引役である産業界がその潜在力を最大限に発揮できる環境の整備に向け、「未来への投資の拡充」「未来を創る基盤の整備」「未来を担う人材の育成」の3本柱に基づく取り組みを強化すべきである。
(1)未来への「投資」の拡充
政府は、第4期科学技術基本計画で示された「政府研究開発投資対GDP比1%、総額約25兆円」の予算目標を、内閣総理大臣の責任とリーダーシップのもとで着実に実現すべきである。具体的には、イノベーション創出の視点が明確な目的基礎研究への重点投資や「最先端研究開発支援プログラム」の後継プログラムの創設、研究開発促進税制の拡充・恒久化等を図ることが必要である。
(2)未来を創る「基盤」の整備
「つくばイノベーションアリーナ」をはじめとする研究開発拠点の整備や環境・エネルギー、医療、農業等の分野における新規市場の創出に向けた戦略的な規制改革、ICT戦略、宇宙・海洋等のフロンティア戦略、知的財産制度の整備と国際標準化戦略、科学技術イノベーション政策の推進体制の整備を推進すべきである。
(3)未来を担う「人材」の育成
人材育成を国家戦略として推進することが重要。具体策として、高度理工系人材、グローバル人材の育成に向けた大学・大学院改革や、「教育」に対する評価の高い大学・大学院へ運営費交付金を拡充する仕組みの構築等を進めるべきである。
3.産学官“協創”の強化
イノベーションを推進するためには、産業界、アカデミア、政府がそれぞれの役割を着実に果たしながら連携し、イノベーションを“協創”することが不可欠である。政府には、強い政治的意志とリーダーシップのもとで具体的政策を実行することを強く求める。産業界も、「イノベーション立国」の構築に向け、自ら主体的な取り組みを行う。
【産業技術本部】