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月刊 経団連  巻頭言 終わりと始まり

小堀 秀毅 (こぼり ひでき) 経団連副会長/旭化成会長

2023年は日本がG7議長国を務める大事な年であり、世界における日本の存在感を高める絶好の機会である。また5月から新型コロナが5類に移行され、ニューノーマルで安心安全な日本社会の実現に踏み出す大きな転機となる。

2023年の干支の癸卯(みずのとう)は、飛躍と物事の終わりと始まりという意味が組み合わさっている。一回り(60年)さかのぼると日本は高度成長期の最中で初のオリンピック開催を前に高揚した時期であり、さらにその60年前は世界に追い付こうと坂の上の雲を目指していた時期であった。どちらも新しい時代への変革期で、人々が将来への希望を胸に懸命にがんばっていた時代だと思う。2023年も半年近くたち、まさにそのような1年となっている。

日本では長かったデフレ時代が終焉を迎え、インフレの兆候が見られている。また世界ではリーマンショック後のグローバル経済の進展から、地政学リスクや経済安全保障を重視したブロック経済へと変化している。企業経営でも有形資産の活用から、知的財産・無形資産の活用にシフトし、年功序列や終身雇用でゼネラリストを目指す時代からジョブ型・終身成長でスペシャリスト育成を重視するようになっている。何よりコロナ禍は人々の価値観や働き方を変え、産業構造まで変えてしまうような大きなうねりをもたらした。

昨今のようなVUCAと言われる不確かな時代に持続可能な社会を実現するには、『ダーウィンの進化論』 —強いものが生き残るのではなく、環境変化に対応したものが生き残る— という概念が重要だ。そのためには個の力の追求に加えて、多様な結び付きから生じるイノベーションが必要になってくる。難しい時代ではあるが、我々が目指すべき姿はカーボンニュートラルな循環型社会、安心安全かつ健康で快適な社会である。その実現に向けて、経済界としても政府やアカデミアと連動し、世界の重要課題の解決に向けて役割を果たすべく一層の検討を進め、実行する年にしたい。

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