先般、経団連は「次期教育振興基本計画」策定に向けた提言を発表した。変化の激しい時代にあっても、教育の歩みは止めてはならない。未来を切り拓くことのできる多様な人材の育成は、経済界のみならず国家的課題であり、「人への投資」は岸田文雄首相が掲げる新しい資本主義の大きな柱でもある。
そうした状況を踏まえ、提言においては優先的に取り組むべき課題を9つ挙げている。その中で私なりに2つの課題を挙げるとすると、まず新しい時代に即した教育という観点でのアントレプレナーシップ(アントレ)教育の推進を挙げたい。日本はアントレ教育に係る各種ランキングが諸外国と比べて低い。30年先、50年先を見据え、起業立国を目指すためには、初等中等教育からアントレ教育をしていくべきだと考える。アントレ教育の先生は、経済界を含め、至るところにいるはずだ。
2つ目は、古くて新しい課題であるグローバル人材の育成だ。グローバルに事業を展開していくためには、育った環境や価値観が異なる人と信頼を築くことができる「異文化理解力」が大切なことは、論をまたない。しかしながら、社会に出てからこの力を磨くのでは遅い。初等中等教育から大学まで繋がる一貫性のある教育と、現地で実際に異文化に触れる留学が重要だと考える。私も、高校生の留学を支援する公益社団法人ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)日本協会の会長をしているが、現地で揉まれた生徒は間違いなく“逞しく”成長する。
また、グローバル人材という点では、幅広い教養も必要だと痛感している。これも社会に出てから学ぶのではなく、リベラルアーツ教育をグローバル教育の一環として組み込んでいくべきだろう。
教育における課題はどれも難題であるが、短期で取り組むこと、中長期を見据え取り組むことの優先順位をつけ、メリハリのある教育施策を実行していく必要がある。同時に、施策には実効性の向上が重要であり、画餅とならぬよう、新しい時代を切り拓く若者の育成に微力ながら力を尽くしていきたい。