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月刊 経団連  巻頭言 スタートアップエコシステムの強化に向けて

永井 浩二 (ながい こうじ) 経団連審議員会副議長/野村ホールディングス会長

今後10~20年の世界におけるメガトレンドが、デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)であることに議論の余地はない。その中で、今後日本経済が持続的な成長を実現していくためには、言うまでもなくイノベーションの創出が不可欠である。

資本市場を通じて社会の発展に貢献することを使命とする証券会社としては、日本経済の活性化に向けて解決すべきいくつかの課題の中でも、特にスタートアップエコシステムの強化が、官民一体となって取り組むべき優先事項だと考えている。

岸田政権は、2022年をスタートアップ創出元年として5カ年計画を策定し、スタートアップ企業の創出に取り組み、戦後に次ぐ「第二創業期」の実現を目指すことを掲げている。経団連も、2022年3月に「スタートアップ躍進ビジョン」を公表し、スタートアップエコシステムの抜本的強化が、日本経済全体を浮揚させ、国際的な競争力を取り戻すうえで最も重要な課題であると示している。こうした官民を挙げた取り組みの今後の進展に大きな期待が寄せられているところである。

2021年、IPO(株式公開)のプライシングのあり方に注目が集まったことがあったが、これはプライシング手法自体に問題があった訳ではなかろう。現在、日本ではまとまった資金を運用する内外の投資家をスタートアップ投資へ呼び込めていないがゆえに、規模が小さい段階からIPOという選択肢に頼らざるを得ない傾向がある。つまり、この問題は日本のスタートアップ企業による資金調達の手段が限られているという課題をいみじくも浮き彫りにしたと言える。スタートアップ企業への投資促進を目指し、未上場企業を公正に評価するノウハウを持った投資家を海外から呼び込むと同時に、マーケットにおいて投資家層に厚みを持たせていくことが重要だ。いずれにせよ、経済の潤滑油である金融市場のさらなる活性化を図ることで、スタートアップ企業への積極的な投資を促し、イノベーションの創出を通じた経済成長を牽引する循環を生み出していく必要がある。

スタートアップ創出元年にあたり、官民連携によるスタートアップエコシステムの強化への取り組みが求められる。

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