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月刊 経団連  座談会・対談 イノベーションの社会実装を加速する ―魔の川、死の谷を越え、ダーウィンの海を泳ぎ切る

片岡 一則
東京大学名誉教授/川崎市産業振興財団副理事長/ナノ医療イノベーションセンター長

畑中 好彦
経団連審議員会副議長、イノベーション委員長
アステラス製薬会長

南場 智子
経団連副会長
ディー・エヌ・エー会長

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今や地球は人類の生存可能な限界「プラネタリー・バウンダリー」を超えつつあると言われている。持続可能な成長のためには、地球環境問題をはじめとするグローバルな課題の解決に早急に取り組まなければならない。世界はもちろん、我が国でも課題解決の基礎となる科学技術の振興とともに、イノベーションを社会に実装することで課題の解決に繋げることが求められている。ポストコロナの社会において科学技術イノベーションの社会実装を加速するには何が必要か、議論を行った。

南場 智子(経団連副会長/ディー・エヌ・エー会長)
イノベーションを担うスタートアップが継続的に生み出されるエコシステムを作る必要がある。そのためには、まず人材の流動化、多様化が必要だ。例えばスタートアップに失敗した人も採用するなど、新卒一括採用ではなく中途採用の比率を高めていくこと。また、企業の組織やスタートアップ・チームでは、日本人だけに偏らないダイバーシティを確保すること。資金調達については、専門領域の評価能力が高い海外のベンチャーキャピタルと大企業の資金を活用すればよい。スタートアップへの投資判断は、経営トップが決めず、マーケットメカニズムでの審判を仰ぐべきだ。5年後には、シリコンバレーではなく、日本の都市にスタートアップの中心地を作りたい。

畑中 好彦(経団連審議員会副議長、イノベーション委員長/アステラス製薬会長)
製薬・ヘルスケアの世界では、ボストン、サウスサンフランシスコ、英国のケンブリッジが世界的なクラスターで、優れた技術が生まれている。これに参加しないと、グローバル競争の中では勝てない。当社は、シードのスカウティング、戦略的投資、研究パートナリングなどの活動を通して多彩な顔を持ちながら、イノベーションの生まれる場所は気にせず、世界中からシードを探して研究や投資に関わっている。製薬・ヘルスケアは失敗のリスクが高いが、未来の社会価値創造を目指して、異業種を含むパートナーとチャレンジしている。新たに生まれる領域に対して、十分なリスクを取って、前向きに取り組んでいきたい。

片岡 一則(東京大学名誉教授/川崎市産業振興財団副理事長/ナノ医療イノベーションセンター長)
大学のスタートアップでは、特に経営の指導についての支援がない。スタートアップを社会実装するための研究もしているが、企業とのマッチングやベンチャー化のコーディネートが必要。社会実装のためには、スタートアップの次が大事。大きな大学ではできても小さな大学ではできない。大学間を束ねる組織をつくる必要がある。iCONMでは、様々な企業、大学が混在し、オープンイノベーションの拠点づくりを進めている。今、インキュベーション施設を造っており、各大学で生まれたスタートアップを呼び、特許やビジネスの専門家に相談できるようにしている。米国のインキュベーション企業とタイアップも進めている。川崎を大学や企業の壁を越えたクラスターにしたい。

根本 勝則(司会:経団連専務理事)

  • ■ 基礎研究から社会実装までの間に直面する障壁
  • イノベーションを創出するスタートアップを含めたエコシステムが必要
  • 知財の活かし方、マインドセットが重要
  • 自分の起業では人、金、知財、資本、全て失敗した
  • 企業の利点は国境や業界の枠を自由に超えられること
  • 経営トップではなく、マーケットメカニズムに審判を委ねる
  • 大学のスタートアップでは経営面での支援がない
  • スタートアップ・ビジネスの能力を見極める人材育成が必要
  • 未知の新規事業領域であっても突き進むマインドを共有する
  • ■ イノベーションの社会実装を加速するために必要なこと
  • スタートアップにはコーディネーターが必要
  • 各大学を束ねるコーディネート組織が必要
  • ヒト・モノ・カネ・チエのネットワークがあるクラスター形成が必要
  • 企業も現場に入り、様々な顔を持ってイノベーションに関わっていく
  • 事業と人材の流動化を絶えず行うことが大切
  • ■ イノベーションエコシステムの構築
  • ナノ医療イノベーションセンターでオープンイノベーションを推進
  • インキュベーション施設にスタートアップを呼び込み、次のステップへ
  • スタートアップへの投資はリスクに対する投資
  • 失敗した人こそ探し出して採用すべきだ
  • 全てのステークホルダーから選ばれる魅力的な企業に
  • 5年後にはシリコンバレーではなく、京都だ、東京だと言われる
    スタートアップの中心地をつくりたい
  • 組織の多様性を確保し日本のポテンシャルを引き出す

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