南場 智子(経団連副会長/ディー・エヌ・エー会長)
イノベーションを担うスタートアップが継続的に生み出されるエコシステムを作る必要がある。そのためには、まず人材の流動化、多様化が必要だ。例えばスタートアップに失敗した人も採用するなど、新卒一括採用ではなく中途採用の比率を高めていくこと。また、企業の組織やスタートアップ・チームでは、日本人だけに偏らないダイバーシティを確保すること。資金調達については、専門領域の評価能力が高い海外のベンチャーキャピタルと大企業の資金を活用すればよい。スタートアップへの投資判断は、経営トップが決めず、マーケットメカニズムでの審判を仰ぐべきだ。5年後には、シリコンバレーではなく、日本の都市にスタートアップの中心地を作りたい。
畑中 好彦(経団連審議員会副議長、イノベーション委員長/アステラス製薬会長)
製薬・ヘルスケアの世界では、ボストン、サウスサンフランシスコ、英国のケンブリッジが世界的なクラスターで、優れた技術が生まれている。これに参加しないと、グローバル競争の中では勝てない。当社は、シードのスカウティング、戦略的投資、研究パートナリングなどの活動を通して多彩な顔を持ちながら、イノベーションの生まれる場所は気にせず、世界中からシードを探して研究や投資に関わっている。製薬・ヘルスケアは失敗のリスクが高いが、未来の社会価値創造を目指して、異業種を含むパートナーとチャレンジしている。新たに生まれる領域に対して、十分なリスクを取って、前向きに取り組んでいきたい。
片岡 一則(東京大学名誉教授/川崎市産業振興財団副理事長/ナノ医療イノベーションセンター長)
大学のスタートアップでは、特に経営の指導についての支援がない。スタートアップを社会実装するための研究もしているが、企業とのマッチングやベンチャー化のコーディネートが必要。社会実装のためには、スタートアップの次が大事。大きな大学ではできても小さな大学ではできない。大学間を束ねる組織をつくる必要がある。iCONMでは、様々な企業、大学が混在し、オープンイノベーションの拠点づくりを進めている。今、インキュベーション施設を造っており、各大学で生まれたスタートアップを呼び、特許やビジネスの専門家に相談できるようにしている。米国のインキュベーション企業とタイアップも進めている。川崎を大学や企業の壁を越えたクラスターにしたい。
根本 勝則(司会:経団連専務理事)
- ■ 基礎研究から社会実装までの間に直面する障壁
- イノベーションを創出するスタートアップを含めたエコシステムが必要
- 知財の活かし方、マインドセットが重要
- 自分の起業では人、金、知財、資本、全て失敗した
- 企業の利点は国境や業界の枠を自由に超えられること
- 経営トップではなく、マーケットメカニズムに審判を委ねる
- 大学のスタートアップでは経営面での支援がない
- スタートアップ・ビジネスの能力を見極める人材育成が必要
- 未知の新規事業領域であっても突き進むマインドを共有する
- ■ イノベーションの社会実装を加速するために必要なこと
- スタートアップにはコーディネーターが必要
- 各大学を束ねるコーディネート組織が必要
- ヒト・モノ・カネ・チエのネットワークがあるクラスター形成が必要
- 企業も現場に入り、様々な顔を持ってイノベーションに関わっていく
- 事業と人材の流動化を絶えず行うことが大切
- ■ イノベーションエコシステムの構築
- ナノ医療イノベーションセンターでオープンイノベーションを推進
- インキュベーション施設にスタートアップを呼び込み、次のステップへ
- スタートアップへの投資はリスクに対する投資
- 失敗した人こそ探し出して採用すべきだ
- 全てのステークホルダーから選ばれる魅力的な企業に
- 5年後にはシリコンバレーではなく、京都だ、東京だと言われる
スタートアップの中心地をつくりたい - 組織の多様性を確保し日本のポテンシャルを引き出す