コロナの影響で国際秩序が混迷を深め、各国の保護主義傾斜に拍車がかかる中、アメリカではバイデン新政権が誕生した。新政権はコロナの克服と経済回復へ向け、分断から融和へと国家・国民の団結を促すとともに、外交政策面もパリ協定への復帰等、国際協調への方針を打ち出しており、今後、様々な変化が起こると考えられる。
自由、民主主義、法の支配、市場経済といった共通の価値観と理念を共有する日米両国は、国際社会が直面する多くの課題の解決に向け、一層連携を強化していかねばならない。
中でも気候変動対策は重要なテーマだ。日米両国が2050年までに温暖化ガス排出量実質ゼロを目標に掲げ、環境政策を強化することは、経済界にとっても大きな機会に繋がる。
特に、脱炭素社会実現には絶えざるイノベーションとその普及が不可欠である。EVや蓄電池、水素等のエネルギーに関連した様々な技術を磨くと同時に、政府・産業界が一体となって市場拡大、関連産業の維持発展に努めることで、脱炭素化は大きく前進する。その中で、日米両国は互いの持つ力を掛け合わせ、世界でリーダーシップを発揮していかねばならない。また、国別のCO2排出量1位、2位である米中の積極的協調も重要な論点である。中国も脱炭素化に向けた動きを見せており、これが米中間の対話と関係改善の糸口となることを願う。
一方、通商面でも、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・発展には米国の存在感が重要であろう。新政権には、アジア太平洋地域でのハイレベルな経済連携と持続的な成長に向けたCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)への復帰、さらにWTO(世界貿易機関)をはじめとする国際的な枠組みでのリーダーシップの発揮等、グローバル視点での積極的な動きを期待したい。
世界は今後、コロナの影響を乗り越え、新たな成長を遂げていくと信じている。その中で、日米両国はさらなる連携のもと、持続可能な国際社会の実現に向けた取り組みを強く牽引し続けなければならない。