篠原 弘道(経団連副会長、デジタルエコノミー推進委員長/日本電信電話会長)
Society 5.0の実現にはDXの推進が急務である。行政のDXは国民の利便性向上が最上位の目的であり、DX自体が目的になってはならない。デジタル庁は他省庁と横並びではなく、その上に立ち指導力を発揮してもらいたい。データ駆動型社会を作る道筋としてアジャイル型のアプローチが大切。産業界も国民も満点主義から脱却し、走りながら問題を解決していくスタイルが望まれる。産業界としては、新しい価値創造にDXを活用することも重要で、そのためにも企業間の信頼感を醸成し、データ共有などの面で様々な企業と協創していかなければならない。
甘利 明(自民党デジタル社会推進本部座長)
デジタル庁は、日本で初めて総理直属の常設組織である。行政のDXについては、強い権限を持っている。日本はこれまで“繋がらないシステム”を作ってきた。レガシーシステムは破棄してもよいと思っている。地方公共団体のシステム構築もデジタル庁主導で進め、業務・システムの共通化や標準化を図っていく。国民には、マイナンバーカードの利便性を含め、デジタル社会の利便性を具体的に示す必要がある。行政DXでは、一人も取り残される人を出してはいけない。また、パーソナルデータの流通をグローバルな視点で見ると、世界の国と連携を取りながら、DFFTの実現について、日本がリーダーシップを発揮すべきである。
岩﨑 尚子(早稲田大学電子政府・自治体研究所教授)
電子政府・自治体研究所で毎年発表している「世界デジタル政府ランキング」の最新調査結果で、日本は7位。ICTのインフラ整備が高度にネットワークされていること、「政府CIO」が設置されていることが高い評価を得た。日本は超高齢社会で、特に過疎化が進む地域ではDXの進展が喫緊の課題になる。デジタル化推進の本質は、超高齢・人口減少社会を踏まえたSociety 5.0の構築である。高齢化は世界共通の課題であり、世界のシニアマーケットは2060年にインフラ投資も含めて約3000兆円になると予測している。その観点からも、高齢者などICT弱者に配慮した、利便性の高いデータ駆動型社会の実現は、日本の経済成長にも大きな影響を及ぼす。
浦川 伸一(経団連デジタルエコノミー推進委員会企画部会長/損害保険ジャパン取締役専務執行役員)
デジタル市場の目指すべき姿は、(1)多様な主体による競争、(2)信頼(トラスト)の基盤となる「データガバナンス」、(3)「トラスト」をベースとしたデジタル市場の実現である。そのためには、公正なルールに基づいた信頼のおけるウェブ環境(Trusted Web)の構築が必要で、推進協議会も立ち上がった。またデータ駆動型社会におけるビジネスとしては、データ取引市場の形成がある。産学官が議論をしながら、一歩ずつ進めていくのが望ましい。個人情報保護法の改正については、規律が統一されていないため、円滑な情報流通を阻害している。制度を一元化し、いわゆる「2000個問題」を早急に解決すべきである。
根本 勝則(司会:経団連専務理事)
- ■ 日本を取り巻くデジタル化の現状と課題
- Society 5.0の実現にはDXの進展が急務
- 日本は“繋がらないデジタル化”に取り組んできた
- データガバナンスの方向性
- 「世界デジタル政府ランキング」 日本は7位
- ■ デジタル庁による行政DXへの期待
- レガシーシステムは破棄してもよい
- DX促進のKPIを定め、ロードマップを作ること
- マイナンバーカードの普及に期待
- デジタル庁は標準化したシステムを国、地方公共団体にクラウドで提供すべき
- DXで「誰一人取り残さない」
- ■ データ駆動型社会を実現する道筋
- データ取引市場の構築を産学官で進める
- データ駆動型社会の実現はアジャイル型のアプローチで
- ICT弱者にも利便性の高いデータ駆動型社会の実現を
- DXの進展に、データの標準化、書式の統一化は避けて通れない
- ■ 産業界への期待
- 企業間でデータを共有し、新しい価値創造に活用する
- 企業にはデータ利活用についての説明責任がある
- ICT、そしてグローバル競争に最適な人材育成を
- リアルの世界でプラットフォーマーに