國部 毅(成長戦略会議有識者/三井住友フィナンシャルグループ会長)
コロナは経済・社会に多大な影響を及ぼしているが、Society 5.0という目指すべき社会像に変わりはない。むしろデジタル化や環境問題への取り組みなど様々な遅れが露呈しており、今後その実現に向けた動きを加速させていかねばならない。企業が持続的成長を実現し国際競争で生き残るためには、マルチステークホルダーに配慮した経営に取り組む必要があり、世界への発信力も問われている。一方、政府には企業のイノベーションや事業の再構築を後押しする資金面でのサポートや法規制の整備を進めていくことが求められている。
野田 由美子(経団連経団連審議員会副議長/ヴェオリア・ジャパン会長)
世界は大きく変わった。パンデミックによって、人間の経済活動が自然界に大きな負荷を与えていることが認識され、人間と自然、経済と地球のバランスの回復に向けて、カーボンニュートラルの動きも一気に加速している。欧州は、環境対策をコロナ後の経済復興の柱に位置付け、未来の先駆者になろうとしている。環境において豊富な実績を有する日本だからこそ、この流れを捉え「環境イノベーション立国」を目指すべきだ。また、デジタル化の進展と相まって、東京一極集中を解消する千載一遇の機会でもある。本格的な地方への分散と自立に挑戦すべき時だ。
石倉 洋子(一橋大学名誉教授)
世界では格差が広がり、各国でポピュリストによる運動が起こっている。日本はそのような世界の現状を捉え切れておらず、まずはその状況を見極める力が必要になってくる。また、企業は未来のビジョンやパーパスを持ち、それを社員や世界に伝えて理解してもらうことが大事である。さらに次世代の若い人達が自らの意見を持って発言出来るような環境を作ることで、外部からだけではなく社内から新たなアイデアを引き出し、既に企業が持っている資産とグローバルな経験知と合わせることで、イノベーションの実現が可能になると考える。
安田 洋祐(大阪大学経済学研究科准教授)
多くの日本企業で、組織内の変化が必要なことは理解していても実行出来なかった人達が、コロナ禍で変化を共有出来た点は大きかったと感じる。また、日本は与えられた課題への適応能力が高く、DXのデータ活用によって自ら課題を発見し、新しい付加価値を生み出すことが出来る。さらにそれが社会課題の解決に繋がっていることを示すことも重要だ。格差問題については、教育・医療など様々な制度を豊かにする視点を持って、市場経済にとらわれない経済圏コミュニティを築くことで解消されるのではないかと考えている。
藤原 清明(司会:経団連常務理事)
- ■ コロナ禍で顕在化した日本の課題
- 再認識した目指すべき「Society 5.0」
- 環境問題に対する意識の変化
- 世界情勢を捉え切れない日本
- 組織内の牽制から変化へ
- ■ ポストコロナ ~2030年の日本
- 今後の日本の成長戦略
- サーキュラーエコノミーと地方の自立
- グローバル企業の役割と必要とされる人材
- DXが導く未来の姿
- 現政権への期待と要望
- 市場経済と経済圏コミュニティ
- Society 5.0 for SDGsの実現に向けて
- 世界から理解される日本へ
- ■ 経済界の役割と実行すべきアクション
- 若い人達の邪魔をしないという発想
- 脱炭素社会に向けた経済界の役割
- イノベーションの担い手として