太田 純(経団連副会長、金融・資本市場委員長/三井住友フィナンシャルグループ社長)
経団連、東京大学、GPIFとの共同研究では、社会課題を解決するイノベーションを後押しするポジティブな投資手法にESG投資を進化させる、という方向性を打ち出し、実現に向けたアクションプランも定めた。建設的対話を深化させる上での課題の一つはESGに関する開示の充実。企業は、社会課題の解決にコミットし、それにより生じる社会のインパクトを提示する必要がある。経団連としては、投資家と企業との建設的対話を促しながら、ESG投資の進化にも取り組む。特に、国際的なESG開示基準の統一に向けた動きや、コーポレート・ガバナンス・コードに関する議論にも積極的に取り組んでいく。
中川 順子(経団連ダイバーシティ推進委員長/野村アセットマネジメント社長)
世界のESG投資残高は2015年末と比べると約34%も増加している。中でも急増している投資手法が「インパクト投資」。従来のリスク・リターンの2軸に加えて、社会や環境に与えるインパクトを3つ目の軸に加えた投資戦略である。これはSociety 5.0の取り組みにも非常に親和性が高い。投資家として、企業のサステナビリティを高めるために貢献出来ることは、ESG投資の金融エコシステムをどう動かしていくかということ。サステナブルな企業には投資資金が流れ、企業活動を後押しする。そうなれば企業は成長し、投資家にもリターンが戻る。その循環を継続していかなければいけない。
宮園 雅敬(年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事長)
超長期投資を行うアセットオーナーとしては、ESG、SDGsは長期的なリターン向上のために行うもの。経済社会へのプラスの影響を最大化していくことが重要で、様々なステークホルダーの間で連携・協働を広げていくことが、経済社会全体の持続可能性の向上をより促進させるものと捉えている。また、ESG情報開示には様々なフレームワークやガイドラインが国内外で相次いで作成されているが、Society 5.0推進企業がマーケットで適切に評価されるためには、国際的基準の統合化や国際ルールが形成されるように働きかけていくことが必要。また、気候変動リスクへの対応は、日本企業にとって大きなビジネスチャンスとなり得る。
佐々木 啓吾(経団連金融・資本市場委員会建設的対話促進WG座長/住友化学常務執行役員)
建設的対話促進WGでは一定の効果を感じているという意見が多く、中でもESG投資やサステナビリティ投資の機運が急激に拡大していると改めて認識した。建設的な対話の出発点は情報開示。各社「統合報告書」の充実、ESG説明会などで対応している。今後は、バーチャル株主総会やウェブでの情報開示、議決権行使のプラットフォームの導入など、デジタル技術の活用が必要不可欠となる。またWGでは、従来の株主中心から、従業員や環境、地域社会など、社会全体を重んじる「ステークホルダー・キャピタリズム」の流れを意識して議論をしたが、社会全体の好循環を目指す意味でも、この流れは止めてはいけない。
井上 隆(司会:経団連常務理事)
- ■ コロナ禍でのSociety5.0 実現の重要性
- DXが一気に加速、コロナ前と同じスピードでは対応が後手に
- 超長期投資家として、コロナ禍のトレンドをしっかりと見極めたい
- 変化への対応力で企業格差
- Society 5.0の実現に向けてデジタル革新のスピードが必要
- ■ ESG投資の進化と今後の課題
- ESG投資の進化に向け、学術界、投資家、経済界が集結
- ESG投資とSociety 5.0で課題解決イノベーション・エコシステムの形成へ
- インパクト投資が2017年から5倍に急成長
- ESG説明会も増え、情報開示の在り方も多様に
- Society 5.0に対する理解浸透が課題
- ■ 企業と投資家との建設的対話
- 非財務情報の開示・評価手法の基準作りや、議決権行使助言会社の在り方に課題
- Society 5.0推進企業が評価される情報開示基準の国際ルール形成を
- 財務にインパクトが大きいマテリアルなESG情報が重要
- 企業活動で生じる社会へのインパクトを提示する
- ■ 今後の企業・投資家への期待、ステークホルダーとの連携・協働
- ESG投資の金融エコシステムをどう動かすか
- ステークホルダー・キャピタリズムの流れを止めてはいけない
- 「地球は子孫から借りているもの」