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月刊 経団連  巻頭言 デジタル・ガバメントの推進に向けて

筒井義信 (つつい よしのぶ) 経団連審議員会副議長/日本生命保険会長

わが国では、生産年齢人口の減少、地方の過疎化等、社会課題が山積している。そうしたなかで、行政サービスを維持し、利用者の利便性向上を果たすためには、官民一体となったデジタル・ガバメントの推進が必須である。鍵は、徹底的な利用者目線にある。これまでも行政サービスのオンライン化は進められてきたが、利用者目線が充分でなく、その利用率は伸び悩んだ。また、地方行政においても、人手不足という問題があるなか、同じ手続きでも自治体ごとに書式や様式が異なり、行政上の非効率かつ利用者のコスト増を招いている。

これを諸外国との対比で見ると、利用者目線のサービスを実現した国もある。フィンランドでは、引っ越し等により住所変更の手続きをすると、官民のデータベースも自動更新される。ニュージーランドでは、オンライン手続きにより法人設立はわずか半日で完了するうえ、添付書類等は共有化され、再度の提出は不要となる。わが国もさらなる取り組みの加速化が喫緊である。

昨年5月にいわゆる「デジタル手続法」が成立し、「デジタル3原則(デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップ)」が基本原則として定められた。国の行政手続きのオンライン原則化、添付書類の省略等が打ち出され、その取り組みが緒に就いたところである。

経団連は、3月に「Society 5.0の実現に向けた規制・制度改革に関する提言」を公表した。提言ではデジタル・ガバメントの推進について、行政手続きにおける「デジタル3原則」の実現や、マイナンバー制度の徹底活用等を重点要望として打ち出した。デジタル・ガバメントは単なる行政の効率化ととらえられがちだが、本質は利用者中心の行政サービス改革を行うこと、そしてデジタル化されたデータを官民で利活用することで新たな価値をつくり出すことにある。また、直近の感染症拡大への幅広い対策の一環として、オンラインで完結できる行政手続き(確定申告や法人登記等)の意義は、あらためて注目されてしかるべきと考える。

課題先進国である日本にとって、デジタル革新は不可欠のソリューションである。デジタル・ガバメントの推進が、経済界のデジタル革新と車の両輪となり、社会構造の転換が進むことで、国家のプレゼンス、競争力の向上につながり、グローバルな人材・資本の蓄積基盤となる。経団連としても、引き続き政府と一体となり、努力傾注していく所存である。

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