2020年は、多くの人々にとって想定外の状況となった。日本では、56年ぶりに東京にオリンピック・パラリンピックを迎え、さまざまなイベントが盛り上がりを見せているはずだったが、現実は予期せぬ方向に進んだ。
新型コロナウイルスは、グローバル化の進展と中国経済の成長を背景に、中国国内にとどまることなく、全世界に拡散した。世界各地で外出制限や国境の封鎖などの感染拡大防止措置が実施され、2020年3月時点において、いつ移動の自由を回復させることができるようになるか見通しが立っていない。結果として、世界中で需要が蒸発し、さまざまな産業に過去最大級の打撃が及んでいる。
企業は、ビジネスへの影響の把握やレジリエントな事業構築に向けて努力を重ねているところであるが、感染拡大とその影響がどこまで広がるかについては予断を許さず、コロナ禍は、想定外の事態の発生がニューノーマルになった端的な例といえるだろう。
こうした現実は、企業のあり方についても見直しを迫っている。今年のダボス会議に先立って世界経済フォーラムが公表した「グローバルリスク報告書2020」では、今後起こり得る地球規模のリスクのトップ10として、感染症のほか異常気象、気候変動の緩和・適応の失敗、自然災害、生物多様性の喪失、人為的な環境災害など自然災害が5つも挙げられた。
経団連では、かねてより「Society 5.0 for SGDs」こそが民間企業が果たすべき役割と考え、経済成長と社会的課題の解決が両立する未来社会の実現に向けて企業行動憲章を見直してきた。また、環境については、温室効果ガスの地球規模・長期・大幅削減の鍵を握る企業のイノベーションを後押しする「チャレンジ・ゼロ」なども進めている。
企業で働く一人ひとりがこうした理念を共有し、利益を上げると同時に、環境や社会、そして未来世代をステークホルダーとして認識するなかで次の時代に起こり得る想定外を減らす努力を積み重ねていくことが、今を生きるわれわれの責務である。