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月刊 経団連  座談会・対談 経済構造改革に向けて

宮島香澄
日本テレビ放送網報道局解説委員

翁 百合
日本総合研究所理事長

西澤敬二
経団連社会保障委員長
損害保険ジャパン日本興亜社長

永井浩二
経団連経済財政委員長
野村ホールディングス社長

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永井浩二(経団連経済財政委員長/野村ホールディングス社長)
金融政策の副作用により、リスクマネーが市場に流れにくい状況を懸念している。金融危機時には有効な策であった低金利が常態化し、マイナス面が顕在化している。個人の金融資産の動きも滞り、これが日本経済の閉塞感を助長しているのではないか。超高齢社会の到来により、財政健全化の実現とSociety 5.0の社会実装を通じた生産性の向上が不可欠。デジタル技術とデータの利活用を行うための設備・インフラ投資を積極的に推進するとともに、イノベーション創出への取り組みや働き手のエンゲージメント向上につながる変革など、企業も変わらなければならない。人生100年時代に向けて「貯蓄から資産形成へ」の流れを促すことも重要。

西澤敬二(経団連社会保障委員長/損害保険ジャパン日本興亜社長)
社会保障制度の持続可能性を確保し、次世代に引き継がなくてはならない。改革にあたっては、「世代間の公平性の確保」「人口減少や技術進歩を踏まえた保険給付」「医療・介護サービスの効率的な提供」の3つの視点が必要である。「後期高齢者の自己負担の見直し」「市販品類似の医療用医薬品の自己負担割合引き上げ」などは優先的に実現すべき。経済構造改革全体の中長期的な視点で考えると、「多様な人材が活躍できる社会づくりを進める」という点が、本質的には大きなテーマとなる。特に65歳以上の雇用機会をしっかりつくっていくことで、経済成長や社会保障の担い手が増えることが期待できる。人とデジタルの共創により、新たな価値を創造し、企業の生産性を高めることも重要。

翁 百合(日本総合研究所理事長)
2020年度の日本経済は海外経済の動向次第だが、内需は比較的底堅いとみている。一方、財政健全化については、2025年度にプライマリーバランスを黒字化する目標を掲げているが、その実現には不確実性が高い。社会保障については、少子高齢化が進むなかで、現役・将来世代の負担を抑えながらすべての世代が安心できる社会保障改革を実現していくことが重要である。データを活用した予防や健康寿命の延伸の取り組みも必要。また、人生100年時代の多様なライフスタイルに応じたかたちで、高齢者でも働きやすい雇用のあり方の検討や年金制度の再構築をすべき。企業経営者がデジタルトランスフォーメーションの社会変化に気づき踏み出していくことが、生産性向上の第一歩となる。

宮島香澄(日本テレビ放送網報道局解説委員)
人口減少は以前から問題提起されながら、保育所不足解消、働き方改革などの対策が遅れた結果、出生数が大幅に減少した。財政や社会保障について、現実に危機が起こる前に意識して対応することが大事。景気に余力がある今、多少無理をしてでも動くべき。今は “ぬるま湯のゆでガエル”の状態である。こうした課題を自分ごととしてとらえられるように報道することがマスコミの責任であると思っている。多様な人材の活躍も大きなポイント。日本のジェンダーギャップ指数は世界121位と低い。女性の活躍推進は、労働時間を短縮するだけではなく、女性に、より早くからやりがいのある仕事を任せるべき。

井上 隆(司会:経団連常務理事)

  • ■ 日本経済の現状ならびに財政・社会保障を取り巻く状況
  • さまざまな環境変化への対応が必要
  • 金融政策の副作用でリスクマネーが市場に流れにくい
  • 社会保障給付費の増大が大きな課題
  • 社会保障の持続可能性に不安を持っている
  • ■ 経済構造改革の方向性
  • Society 5.0の社会実装を通じた生産性の向上を
  • 社会保障制度の持続可能性を確保し次世代に引き継ぐ
  • 予防や健康寿命の延伸に関する取り組みが重要
  • 多様な人材の活躍がポイント
  • ■ 国民の理解醸成に向けた方策
  • 国民に自分ごととして実感が伝わるように報道する
  • 受益と負担の明確化が国民理解には重要
  • ■ 経済構造改革を進めるにあたって企業・国民が自ら取り組むべきこと
  • 蓄積したデータをオープンにし介護産業全体の生産性向上に貢献したい
  • 若い世代の資産形成を促す仕組みが必要
  • 財政や社会保障の現状を国民一人ひとりが理解し認識を共有する必要がある
  • 企業経営者は社会の変化を認識すべき、個人は自助の大切さを認識すべき

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