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月刊 経団連  巻頭言 豊かな価値連鎖による新たなビジネスパラダイムの創造

井阪隆一 (いさか りゅういち) 経団連審議員会副議長/セブン&アイ・ホールディングス社長

最近、異業種の方にお声がけいただき、いろいろとご教示いただく機会が増えている。私たちグループがこの5月に「環境宣言」を公にした効果の1つといえそうだ。

私たちは、流通サービスのイノベーションを通じて、お客様の生活や社会に新たな価値を提供することで、企業価値を高めてきた。だが、今や企業は企業価値の向上とともに、SDGs(持続可能な開発目標)に代表される社会課題解決に貢献することも求められている。私たちは、社会課題解決に関するコミットメントの1つとして、「環境宣言」を公表した。宣言では、CO2排出量の抑制、廃プラスチックの削減やプラスチック・リサイクル、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達の4つのテーマを柱とした。

往々にして、環境問題や社会課題解決への取り組みに際して、過去の延長線で発想して高い目標を設定しても、慣性モーメントが大きいために、従来の慣習等にとらわれてしまい、実現への道のりは大変険しく感じるばかりだ。そこには、過去にとらわれない新たな発想、柔軟な発想が必要であろう。また、環境問題や社会課題の解決は、どのテーマも一企業が単独で解決することは困難だ。サプライチェーン全体、さらには社会インフラ全体を見通して、最適化を図っていかなければ、実効性は得られない。幸いにも、私たちの環境宣言の達成に向けても、さまざまな企業、自治体等の皆さんから、「ご一緒に」というお声がけをいただいている。

このような意味で「環境」や「社会課題解決」というテーマは、さまざまなビジネスの出会いを可能にするプラットフォームでもあるし、このテーマに取り組むことは、企業の構造改革を進める意味でも、必要なステージであると感じる。産学官が知恵を出し合い、豊かな価値連鎖を生み出すことで、社会の新たな成長モデルも創出されると確信している。

環境問題をはじめとした社会課題解決は、未来世代への責務でもある。この取り組みを通して新たなビジネスパラダイムを切り拓くことも、私たちの重要な使命であると考えている。

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