石塚邦雄(経団連副会長、生活サービス委員長/三越伊勢丹ホールディングス特別顧問)
アベノミクスが始まって6年になる。経済の確実な好循環までには、まだ時間が必要だ。他方、人口減少や高齢化・財政健全化という大きな問題が先送りされている印象は否めず、2050年ぐらいを見据えた長期の取り組みが必要だ。将来の不安の解決に長期的に取り組む姿勢を見せれば、Society 5.0の実現にもつながる。Society 5.0の根底には、誰もが安心安全に活力を持って暮らせるユニバーサル社会というものがあると考えている。これからの企業、特に生活サービス産業は、人の多様な幸せや心の豊かさを実現していくことが求められている。
進藤孝生(経団連副会長、産業競争力強化委員長/日本製鉄会長)
さらなる税率引き上げの可能性も視野に入れつつ、まずは秋の消費税増税をしっかりやりきり、財政再建につなげてほしい。財政健全化は、私たちの子孫のためだけでなく、日本の国際的な信用を維持するという面でも、絶対にやらなくてはならない。生産性革命に関しては、日本の多くの製造業で老朽化・高齢化している設備を、いかに先端技術を備えた設備にリプレースしていくかを考え、ここに対する政策があってもいい。外交に関しては、多くの政治リスク、地政学的リスクなどがあるなかではあるが、国の将来を考えて進めてほしい。
隅 修三(経団連副会長、人口問題委員長/東京海上ホールディングス会長)
日本が今乗り越えるべき最大の課題は、人口減少だ。都市・地方間などの格差は拡大しており、人口減少がこれを加速させている。夫婦が安心して欲しい人数だけ子どもを産み育てることができる環境づくりが必要で、そのためには、財政配分を高齢者重視から子育て優先へ組み換えるなど、社会保障の抜本的な見直しが不可欠だ。日本経済の根底にあるこの問題を先送りにして、経済の成長を維持し、財政再建を行うことは極めて困難だ。新たな時代が始まる改元という機運を逃さず、抜本的な対策を打ち出す必要がある。
山口廣秀(日興リサーチセンター理事長)
潜在成長率が1%弱の日本経済では、すべての人が豊かさを感じるということは難しい。経済のポテンシャルを高めるには、企業や産業の新陳代謝が重要だ。既得権益に縛られていては、新しい動きは出てこない。人材の質の向上を図りつつ、リスクテイクがどんどんできるような環境の整備も必要だ。日銀が長く続けている大規模な金融緩和は、生産性や収益性の低い企業を温存しがちである。デフレ克服のために金融緩和は必要だが、一方で大きな弊害をもたらしていることも踏まえながら、しっかりとした政策運営を行ってほしい。新陳代謝を促進してほしい。
井上 隆(司会:経団連常務理事)
- ■ 日本経済に関する現状認識と課題、今後の見通し
- 景気の減速感はより強まる
- 人口減少問題に対する抜本的な改革が急務
- 米中関係や日米関係、中国経済の動向に注意が必要
- デマンドサイドからの日本経済活性化策も必要
- ■ 企業を取り巻く環境変化
- 米中関係にアジア諸国が相当な影響を受けることは明白
- デジタル化の進展が産業構造そのものを変える
- 労働供給の減少が日本の経済成長の制約に
- 65歳以上と若い世代の消費性向が下がっている
- ■ 潜在成長力の向上に向けての課題と解決の方向性について
- 企業や産業の新陳代謝を促していくほかない
- 高齢者、外国人により消費を促す施策を
- 日本社会は外国人なしでは回らなくなってきている
- 高度な文理融合人材が求められていく
- 職場と人材のマッチングが人材の質を高めることにつながる
- ■ 政府への期待
- 金融政策の正常化についての検討も
- 2050年ぐらいを見据えた、長期の取り組みを
- さらなる消費税増税を視野にしっかりと財政再建を
- 子育て優先を軸に社会保障の抜本的な見直しを