工藤泰三(経団連副会長、経営労働政策特別委員長/日本郵船会長)
海運業界はコモディティー化が進み、操船や安全性担保が難しい領域のみが付加価値の高いビジネスモデルとなっている。そうしたなか、当社では、船舶データや気象情報の一元管理による運航サポート、世界中のコンテナ位置・状態のビッグデータを活用したイールドマネジメントなど、デジタル技術の活用で高付加価値化を図っている。また、船員の質の向上が安全・安定輸送という点で競争力強化の鍵となるため、フィリピンに商船大学を設立するなど、優秀な人材の育成・確保にも努めてきた。今次労使交渉・協議に向けては、賃金だけでなく総合的な処遇改善について労使の議論を深めていきたい。
中村天江(リクルートワークス研究所主任研究員)
イノベーション創出に向け、高度専門人材にとって魅力的な処遇制度を導入し、育成を強化する取り組みを支持する。今回の経労委報告は、総合的な処遇改善により従業員のダイバーシティに基づく重点配分を打ち出した点、教育投資の重要性を述べている点を評価する。今後、同一労働同一賃金に伴う待遇説明の強化により、正社員以外の方々のモチベーションが向上し、企業の生産性が上昇することを期待する。
小堀秀毅(経団連審議員会副議長/旭化成社長)
当社は、「収益性の高い付加価値型事業の集合体」という2025年の姿を見据え、多角的な事業と多様な人財の結束で、次なる飛躍の基盤づくりを行っている。デジタルトランスフォーメーションによるイノベーション創出を実現するために、素材分野で「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」を導入するなど、さまざまな取り組みを進めている。2017年に「高度専門職制度」を改定。また、働き方改革を超えた「働きがい改革」も進めている。今次労使交渉・協議では、経労委報告に基づき、総合的な処遇改善に重点を置いて議論したい。
進藤清貴(経団連雇用政策委員長/王子ホールディングス会長)
製紙産業は、SDGsと親和性の高い産業である。当社では、150年近い歴史のなかで培った、木質資源や紙を活用する技術を応用し、SDGsへの取り組みを進めている。イノベーション創出を加速するため、人事面での後押しとして「認定研究員」制度を導入し、高度な専門知識を有する研究員に、革新的な研究開発に集中できる環境を整えている。2014年度下期より働き方改革に本格的に取り組むとともに、人事制度改革やダイバーシティの推進も行っている。今次労使交渉・協議では、従来どおり、賃金引き上げは会社業績を賞与に反映すること、「増益=増額、減益=減額」にのっとることが、基本な考え方である。
椋田哲史(司会:経団連専務理事)
- ■ イノベーション創出による生産性向上と人材育成
- コモディティー化する海運業界、デジタル技術の活用は不可欠
- マテリアルズ・インフォマティクスで素材開発を加速
- 「紙」を活用した技術でSDGsに取り組む
- 働く人たちのキャリアもサステナブルに
- 若手キャリアをグローバル人材として育成していくことが課題
- フィリピンに商船大学を設立、優秀な船員を育成・確保
- 働き方改革を超えて「働きがい改革」を目指す
- 日本企業は尖った人材を尖ったまま育てていけるか
- ■ 2019年春季労使交渉における経営側の基本スタンス
- 2019年版経労委報告のポイント
- 総合的な処遇改善を重視
- 春季労使交渉の期間に限らず、労使双方で議論を尽くすべき
- Society 5.0による働きがい向上とイノベーション創出
- 多様性に基づく重点配分、教育投資の重視を評価する