1. トップ
  2. 月刊 経団連
  3. 座談会・対談
  4. 働きがい、生産性向上を実現する働き方改革

月刊 経団連  座談会・対談 働きがい、生産性向上を実現する働き方改革

隅田 貫
日独産業協会特別顧問

菊池宏行
東京石灰工業社長

松浦民恵
法政大学キャリアデザイン学部准教授

冨田哲郎
経団連副会長、労働法規委員長
東日本旅客鉄道会長

PDF形式にて全文公開中

冨田哲郎(経団連副会長、労働法規委員長/東日本旅客鉄道会長)
経済成長を続け、さまざまな社会課題を解決し、豊かな日本社会を維持・発展させていくためには、働き方改革による生産性向上とイノベーションの創出が不可欠である。働き方改革における経営者の役割は、働く人にとって「幸せな働き方」を提供することである。働き手よし、企業よし、社会よしの「三方よしの働き方改革」を目指し、経団連が推進するSociety 5.0と連動させていく。機械化やシステム化を推進していく一方で、社員の力を引き出し、伸ばし、活かすための仕組みづくりを進める。それが生産性向上の鍵となる。

松浦民恵(法政大学キャリアデザイン学部准教授)
労働力人口が減少する日本において、ダイバーシティとイノベーションが働き方改革のキーワードとなる。各社の取り組みを見ると、働き方改革自体は広がってきたものの、労働時間削減のみが目的化されているケースが目立つ。社員一人ひとりが仕事と仕事以外の時間をどう使うか、自分で考えられる、自己管理できるようにならなければ、根本的な改革にはならない。仕事以外に「やるべきこと・やりたいこと」を見つけることも重要であることから、働き方改革と生活改革は表裏一体だと認識している。働き方改革を進めるうえでは、トップダウンとボトムアップの双方向のアプローチが必要となる。社内で自由に意見を言いやすい環境を経営側が整え、社員側も大局的な視点を持ちながら現実的な提案の声を上げていくことが重要だ。

菊池宏行(東京石灰工業社長)
社員がやりがいを持って良い仕事ができる環境を提供することが、働き方改革における経営者の役割である。社員のマインドを変えていくため、日ごろから仕事の質の向上、効率的に働くことの重要性について社内で理解が深まるよう心がけている。仕事の質、人の質こそが中堅企業の生命線であり、これらが企業の価値につながっていくよう、人事評価においては成果よりもプロセスを重視している。経営者と社員の距離が近いという中堅企業の利点を活かし、コミュニケーションを重視しながら働き方改革に取り組んでいく。

隅田 貫(日独産業協会特別顧問)
日本とドイツの働き方を比較すると、日本人は自律型、ドイツ人は自立型となろう。どちらにも長所はあるが、効率性の面では自立型に軍配が上がる。日本企業は同調圧力が強いため、無駄な「ホウレンソウ」や会議が多すぎる。現在の働き方改革の方向性は間違っていない。取り組みを進めていけば、自立的に仕事をし、自ら自己啓発を行い、創造性を発揮する社員が増えていくだろう。成果よりもプロセスを評価する仕組みがあれば、社員はおのずと会社を好きになる。さらには、そうした会社とビジネスをすることでバリューを得た、とお客様にご満足いただけることになる。

椋田哲史(司会:経団連専務理事)

  • ■ 企業はどのような働き方改革を目指すべきか、また、どのように進めるべきか
  • 「働き手よし、企業よし、社会よし」の働き方改革を目指す
  • 社長の仕事は、社員のマインドを変えていくこと
  • 「自律型」の日本人と「自立型」のドイツ人
  • ダイバーシティとイノベーションを実現するための働き方改革を
  • ■ 働き方改革をどのように生産性向上、イノベーションに結び付けるのか
  • 同調圧力に抑えられている日本人
  • 時間の「主」にならなければいけない
  • 社員が「やるべき仕事」に集中できる環境づくり
  • 社員の力を創造的な仕事に向けることが生産性向上の鍵
  • 自分の将来を自分でデザインしてもらいたい
  • 仕事の質、人の質の向上が会社の生命線
  • 自己啓発が必要なら自分から会社に働きかけるべき
  • 仕事以外の時間を自己成長につなげられる人材が必要
  • ■ 働き方改革の実効性を高めるうえでの政府や経済界の役割は何か
  • Society 5.0時代の働き方改革を目指す
  • 働き方改革に取り組む企業を顕彰する仕組みが必要
  • 日本の働き方のルールを世界展開せよ
  • 働き方改革はトップダウンとボトムアップのバランスが大切

「2018年11月号」一覧はこちら

「座談会・対談」一覧はこちら