山本正已(経団連行政改革推進委員長/富士通会長)
Society 5.0の社会では、国民・事業者・行政の間でデータが円滑に流通することが大前提。とりわけ行政はデータの集積地として重要な位置を占める。行政のデジタル化は、社会全体のデジタル化・ネットワーク化の基盤である。今年1月に訪問したエストニアでは、デジタル化を国家の生き残り戦略として明確に位置付け、国を挙げて推進していた点が強く印象に残る。「課題先進国」である日本は、世界に先駆けピンチをチャンスに変えていける。少子高齢化などの課題解決に向け新しいサービスをつくり出し、成功事例として積極的に輸出していくことを目指すべきだ。
甘利 明(自由民主党行政改革推進本部本部長/衆議院議員)
政府は「行政サービス改革」の推進にあたって、①デジタルファースト、②ワンスオンリー、③コネクテッド・ワンストップという「デジタル化3原則」を掲げている。このデジタル化3原則にのっとって行政の意識改革、行動変革を進めていくことが重要である。2013年に「政府CIO」を設置したことで、スピード感は高まっている。マイナンバー制度をはじめ、国民との合意形成を積み上げながら、利便性を体感してもらうことで、デジタル化のさらなる浸透を図りたい。
國領二郎(慶應義塾常任理事/IT総合戦略本部新戦略推進専門調査会デジタル・ガバメント分科会座長代理)
マイナンバーをはじめとする基盤が整備されてきたことによって、デジタル・ガバメントは実現に向け大きく進み始めている。特に「書類を電子化する」という発想から、「データを中心に考える」という発想に変わってきたと実感している。最大の課題は、国民や企業との接点が多い地方自治体のデジタル化である。現在、マイナンバーのようなIDを一つ一つの行政サービスに付与することで、業務の効率化と利便性の向上を目指す取り組みを進めている。
岩﨑尚子(早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所教授/国際CIO学会理事長)
電子政府・自治体研究所では、毎年、世界のICT先進国を中心とした65カ国を対象に「電子政府進捗度ランキング」を発表している。そのベンチマークの1つである「オープンデータ」について、米国、英国をはじめとする「オープンデータ先進国」の事例から学ぶべきである。デジタル・ガバメントの先進的な取り組みを検証すると、コストメリットに対する評価が高い。利用率や利便性を高めるためには、ソーシャルメディアを活用する米国の事例などを参考にしながら、高齢者をはじめとする「デジタル弱者」にしっかりと配慮していけるかどうかが鍵となる。
根本勝則(司会:経団連専務理事)
- ■ Society 5.0時代の行政のあり方
- 「デジタル化3原則」にのっとって行政サービス改革を推進する
- マイナンバーをはじめとする「道具立て」はそろった
- 日本社会全体のデジタル化に期待する
- オープンデータ先進国の事例に学べ
- ■ 電子行政の推進に関するこれまでの取り組み
- 「デジタル弱者」にとって使い勝手の良いシステムを
- 政府CIOの設置がターニングポイント
- デジタル社会実現の起爆剤として「デジタルファースト法案」に期待する
- ■ 電子行政の国際動向
- 海外におけるデジタル・ガバメントの先進的な取り組み
- エストニア政府CIOのレクチャーで考えたこと
- デジタル・ガバメントのシステムを国の強みに
- 民主主義とスピード感の両立は可能か
- ■ デジタル・ガバメント実現に向けた取り組みの方向性
- クレームに耳を傾けることで改善していきたい
- テクノイノベーションからサービスイノベーションへ
- 行政サービスにもIDを付与して効率化を図るべき
- デジタル省の創設を見据えた体制構築を