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月刊 経団連  巻頭言 自由経済圏の拡大とアジアとの経済連携の深化

小林 健 (こばやし けん) 経団連副会長/三菱商事会長

欧米での反グローバリズム・自国優先主義の機運の高まりに対し、わが国主導で大規模な経済連携協定である日EU EPAおよびTPP11が妥結・発効へ進んでいることは意義深い。また、ここ数年続いていたスロートレードも、ようやく昨年から解消の兆しにあり、わが国の貿易量の3分の1超を占めるアジア地域の貿易活動も回復していることは喜ばしい。そのような状況下、今はまさに、アジア地域における自由で開かれた経済圏の形成・拡大に向け、わが国が主導的役割を果たす好機である。

近年、世界の経済成長に対するアジア地域の寄与は約60%に至っている。アジア新興国の経済成長は今後も中長期に続く見込みであり、拡大する自由経済圏での各国間の経済連携の重要性はますます高まるであろう。経済連携協定の発効・拡大を促進するとともに、人的支援に加え、質の高いインフラ輸出を中心に、現地事業パートナーとの協業関係をより一層深化させることにより、アジア地域の経済発展をさらに後押しすることができる。

一方、経済発展に伴い、これらの国々の期待は、従来の電力・鉄道等のハード・インフラに加え、より環境に配慮した取り組み、豊かな生活につながるソフト面重視の事業に移行することが予想され、インフラ整備にとどまらない、豊かな社会の実現への貢献が一層重要になる。この点で、わが国および経団連が推進するSociety 5.0の実現、またSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取り組みで目指す持続可能な豊かな社会は、まさにアジア諸国が描く社会であろう。わが国が取り組みを加速し、このような社会の実現に向けた新しい経済社会モデルを構築し、さらにアジア諸国に普及させることで、アジアの新たな発展に寄与することもできる。

来るべき自由で開かれた経済圏のなかで、アジアとの経済連携は新たなフェーズに入ろうとしている。経済連携協定による自由な経済活動をプラットフォームとし、持続可能な豊かな社会の実現を共通目標に据えた、わが国の率先した取り組みを提唱したい。

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