宮永俊一(経団連副会長/三菱重工業社長)
欧米や中国などでは、少子高齢化社会を見据え、IoTやAIを活用した自動化を核とする設備投資が増えている。金融緩和により資金調達がしやすい状況にあるという条件に加え、日本のSociety 5.0やドイツのIndustrie 4.0などの動きが浸透してきたことが、その背景にあるのだろう。また、私たちが次の世代に残せるレガシーは、日本を世界のなかで尊敬され、信頼される国にすることだ。そのためには、利益追求だけで終わらない海外への投資を積極的に行うべきである。今後、経団連のなかでも議論し、提言していきたい。
宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
欧米では、極右勢力の台頭のようにナショナリズムとポピュリズムの結合で生まれた現象が目立つ。その背景には排外主義的・人種差別的イデオロギーがある。日本でもポピュリズムは見られるが、幸いそうした傾向は見られない。しかし、若い世代が希望の持てる社会を目指さなければ、「醜いナショナリズム」にシフトするリスクは高まる。日本社会の健全な発展のためにも、経済成長が必要だ。北朝鮮、中国、サウジアラビアをめぐる状況も、世界情勢の不確実性を高めている。それぞれにリスクを見極め、対策を練っておく必要がある。
飯島彰己(経団連副会長/三井物産会長)
総合商社の仕事は、従来の「需要と供給をつなぐ仕事」から、世界的な共通課題、社会課題の解決のために、まだ世界中のどこにも存在しないソリューションを新たに「創造するためにつなぐ仕事」に進化している。米国がTPPを離脱し、中国が「一帯一路」の戦略を進めるなか、日本の通商政策は、ますます重要になってくる。その意味では、2017年中に、日本がリーダーシップを発揮して、日EU EPAの大枠合意、TPP11の大筋合意の実現に至ったことを高く評価したい。
永井浩二(経団連経済財政委員長/野村ホールディングス社長)
世界的な好況が約6年にわたり続いているが、このトレンドは2018年も継続すると見込む。また、好調な世界景気を背景に、輸出や設備投資が日本の景気をけん引しよう。国内の設備投資は好調な輸出環境に加え、人手不足の深刻化に伴う省力化の必要性も相まって2018年も勢いを維持するとみている。1800兆円に上る個人金融資産に関しては、今後、大規模な相続が発生し、地方から都市圏への「富」の移転が加速する見通しだ。地方の活性化に一層取り組まなければ、日本経済全体が縮小するおそれがある。現役世代の資産形成に対する支援も必要であろう。
久保田政一(司会:経団連事務総長)
- ■ 2018年の内外情勢の展望
- 米国の国際的関与が低下するなかで
- 2018年も世界的な好況は継続する
- 「変革」のための設備投資が各国経済を支えている
- 中国、インドにおけるビジネス環境の変化に注目
- 楽観視できない金融情勢
- 北朝鮮、中国、サウジアラビアの動向に注意せよ
- ■ 長期にわたる経済成長の継続に向けた企業の取り組みと今後の課題
- 総合商社のビジネスは、ソリューションの創造
- グローバル化とローカル化を組み合わせるビジネスが増えていく
- 構造的な変化を乗り越える
- ■ 今後の経団連としての取り組みや政府への提言
- 2020年の東京オリ・パラ以降を見据えた投資を
- 現役世代の資産形成を支援するべき
- 経済連携の推進を期待する
- 世界から尊敬され、信頼される国になるために