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月刊 経団連

月刊 経団連2017年3月号

特集 人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上

巻頭言

衣食足りて礼節を知る

十倉雅和 (経団連副会長/住友化学社長)

同世代で集まる懇親会は、決まって、自分の「孫」と「病気」の話題になる。大変残念ではあるが、今回は、私の孫の話ではなく、別の話をさせていただきたい。 こうした話題を少し俯瞰してみると、これは、日本の「未来(子ども)」と「現在(高齢者)」の暗喩のようにも思えてくる。

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特集

人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上

日本は世界に類を見ない急激な人口減少時代を迎えつつある。日本経済にとっての重大な危機を、飛躍的な生産性向上を実現する絶好の機会とすべく、企業は「働き方・休み方改革」や「多様な人材の活躍促進」に取り組んでいる。本座談会では、働き方・休み方改革のあり方、多様な人材の活躍促進のポイント、2017年春季労使交渉・協議に向けた基本スタンスなどを議論する。

座談会:人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上

  • 工藤泰三 (経団連副会長・経営労働政策特別委員長/日本郵船会長)
  • 武石恵美子 (経営労働政策特別委員会アドバイザー/法政大学キャリアデザイン学部教授)
  • 岡本 毅 (経団連副会長・雇用政策委員長/東京ガス会長)
  • 伊藤一郎 (経団連審議員会副議長・女性の活躍推進委員長/旭化成会長)

PDF形式にて全文公開中

工藤泰三(経団連副会長・経営労働政策特別委員長/日本郵船会長)
これまで日本で働き方改革が進まなかった背景として、労働力需給が逼迫していなかったことがある。生産年齢人口減少が待ったなしの課題となっている今こそ、働き方改革やダイバーシティ推進を通じて生産性向上を図る好機である。今次労使交渉・協議に向けては、経済の好循環を力強く回していくために、賃金引き上げのモメンタムを継続していく必要がある。一方、個人消費を回復するために、政府には国民の将来不安を払拭するための官民の取り組みを期待する。

武石恵美子(経営労働政策特別委員会アドバイザー/法政大学キャリアデザイン学部教授)
日本企業トップが働き方改革に本気で取り組み始めた背景には、人口減少への対応だけでなく、ダイバーシティ経営による競争力強化というポジティブな側面がある。長時間労働の是正を含む働き方改革を実現するためには、経営トップの意志表明はもとより、働く人が自身のキャリア形成を主体的に考えることも求められる。政府は、賃金引き上げ等の労働条件決定に関して労使自治を尊重するべきであり、子育て・年金・介護などの社会保障制度改革により注力するべきである。

岡本 毅(経団連副会長・雇用政策委員長/東京ガス会長)
勤勉とは長時間会社にいることではない。効率よく働き生産性を高めるべきとの考え方をベースに企業が働き方改革を推進するのは必然的な流れである。経営トップは、働き方改革を断行するという強いメッセージを発信すると同時に、それにふさわしい施策を行っていく必要がある。今次労使交渉・協議では、個別企業の支払い能力、労使の話し合い等を通じて、さまざまな選択肢のなかから、具体的な施策が決められることになるだろう。

伊藤一郎(経団連審議員会副議長・女性の活躍推進委員長/旭化成会長)
製造業の現場では、ロボットやAI、IoTなどの最新技術を導入することで、生産性向上が進みつつある一方で、余剰人員を他の業務に吸収していくことが課題となっている。働き方改革は、ホワイトカラーとブルーカラーの違いをはじめとする、それぞれの職場の特徴を踏まえて進める必要がある。個人消費を回復するためには、各企業が業績に応じて賃金を引き上げる流れを維持するとともに、政府には、社会保障制度を含めた構造改革の推進が求められる。

椋田哲史(司会:経団連専務理事)

  • ■ 企業の成長につながる働き方・休み方改革
  • 働く側の意識改革も必要
  • 労働力人口の減少は生産性向上のチャンス
  • 「できることは全部やる」という覚悟で取り組む
  • 製造業の現実に即した働き方改革が必要
  • 働き方改革は「現場感覚」が重要
  • ■ 多様な人材の一層の活躍促進
  • 女性・高齢者・障がい者が活躍できる制度づくり
  • 「リケジョ」の採用を増やすための取り組み
  • 女性の海外勤務を積極的にサポートする
  • 「男性主流」の考え方を乗り越えることが課題
  • ■ 2017年春季労使交渉・協議に対する経営側の基本姿勢
  • 賃金引き上げのモメンタムを継続することが重要
  • 社会保障を含めた思い切った構造改革を
  • 国民の将来不安を解消することが急務
  • ダイバーシティ時代の労使交渉を考える

2017年春季生活闘争に向けて
―デフレ経済への後戻りは許されない 月例賃金の引き上げを
 神津里季生(日本労働組合総連合会会長)

  • 経済の自律的成長に向けて
  • 「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組み強化
  • 結語

今、地方の経営者がなすべきこと
 海輪 誠(宮城県経営者協会会長/東北電力会長)

  • “ものづくり”など産業の振興
  • 働き手不足と人口減少
  • 「働き方改革」と「地方創生」
  • 春季労使交渉・協議に向けて

長時間労働の何が問題なのか
―働き方改革の本当の課題
 阿部正浩(中央大学経済学部教授)

  • 年間総労働時間の推移
  • 1日あたりの労働時間に着目すべき

大事なのは無期・有期のメリハリ活用
 玄田有史(東京大学社会科学研究所教授)

  • 契約就業時間と契約期間
  • 課題は無期雇用のパート社員拡充に向けた環境整備
  • 中核的・集中的な業務の担い手としての有期雇用

サービス業の生産性を考える
 中島隆信(慶應義塾大学商学部教授)

  • 生産性を上げる方法
  • サービス業の類型化
  • 生産性の向上策とは

労働力減少時代のAIと共存する働き方と求められる人材像
 岸 浩稔(野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部主任コンサルタント)

  • 労働人口の49%がAIによって代替可能
  • AIと人との共存によって、より高付加価値の業務へとシフトする働き方
  • AIと共存した近未来に求められる人材像

2017年版経営労働政策特別委員会報告を公表
―人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上
 (経団連労働政策本部)

  • 企業の成長につながる働き方・休み方改革
  • 雇用・労働における政策的な課題
  • 2017年春季労使交渉・協議に対する経営側の基本姿勢

働き方を見直し、生活を充実させ、最大限の能力発揮を
 福島賢一(川崎重工業執行役員人事本部長)

  • これまでの取り組み
  • 働き方における課題
  • 社長の思い
  • K-Win活動

多様な人財の活躍推進による価値と活力の創出に向けて
―時間と場所のフレキシビリティを高めて、生産性を上げる「JALワークスタイル変革」
 久芳珠子(日本航空人事部ワークスタイル変革推進室アシスタントマネージャー)

  • “世界で一番お客さまに選ばれ、愛される航空会社”
  • 制約ある社員もフェアに活躍できるJALへ
  • 社員が成長することが、会社の成長につながる
  • 生産性の高い職場へ

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一般記事

ASEAN経済統合の現状と課題
 レー・ルオン・ミン(ASEAN事務総長)

対米連携の一層の強化に向けて
 久保田政一(経団連事務総長)

  • 米国事務所の再開
  • 訪米ミッションの派遣
  • 米国要人との交流
  • 21世紀政策研究所、経済広報センターの活動
  • 経団連対米連携強化タスクフォースの設立

少子高齢社会と今後の産業構造
 塩崎恭久(厚生労働大臣)
 愛知和男(日本介護事業連合会会長)
 京極高宣(浴風会理事長)

企業広報に関するノウハウとメディアリレーションの機会を提供する
 久保田政一(経済広報センター理事長)

  • 企業広報に関する最新のノウハウが取得できる
  • 危機管理について幅広く学ぶことができる
  • 主要メディア幹部とのリレーションづくりに役立つ
  • 他社の取り組みを参考にすることができる
  • グローバル広報に関するノウハウを取得できる

連載

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    オリンピックで進化する
    ―ALSOKの取り組み

    • リオ2016大会における社員の活躍
    • ALSOKにとってのスポーツ
    • 選手の育成等
    • スポーツ振興への貢献
    • 東京2020大会に向けて
    • 大会に向けての選手の育成
    • そして、その先へ
  • 経営者のひととき
    ブッダを訪ねて
    佐藤美樹(朝日生命保険社長)

  • Essay「時の調べ」
    散歩が楽しい東京の街10
    武田憲人(「散歩の達人」編集長)

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