武田洋子(三菱総合研究所政策・経済研究センター副センター長)
2017年の世界経済を展望するうえでの注目ポイントは、米国新政権の政策運営、欧州の政治情勢、中国経済の動向である。現時点では上振れ・下振れ両方の可能性をみておくしかない。日本は、決してぶれずに、抱えている課題の克服に取り組んでいくことが肝要であり、そのために必要な改革の実行やイノベーションに、人々の英知を結集すべき。チャレンジする人を皆で応援することによって、質の高い成長と持続可能な社会を両立し、世界から信頼を集める成熟国になれる。
渡邊頼純(慶應義塾大学総合政策学部教授)
Brexit、米国の新大統領の2つが世界経済の最大の不確実性である。成長戦略の重要な柱であったTPPが頓挫した場合に備え、二国間主義、相互主義の重視を表明している米国新政権の動向をよく見極めるべき。さらに、日EU EPA、RCEP、日中韓FTAなどの規模の大きな経済連携交渉を、日本のイニシアティブのもと進めていく必要がある。英国のEU離脱に対しても、「No Brexit」の可能性も含め、しっかり情報収集を行い、対策を練っておかなければならない。
中西宏明(経団連副会長/日立製作所会長)
日本経済は全体としてまだら模様だが、悲観的な感覚はない。Society 5.0という新たな社会の建設に向かって、2017年はさまざまなものが動き出す年になる。第5期科学技術基本計画がスーパースマート社会Society 5.0を目指すことを宣言してから、実際の技術革新のスピードに後押しされるかたちで、政府も迅速に対応している。現在、未来投資会議で議論している内容が、2018年の成長戦略に盛り込まれる予定である。今は、政界と経済界の間で問題意識が合致しており、官民一体で取り組む好機だと考える。
國部 毅(経団連副会長/三井住友銀行頭取)
2017年の国際金融情勢を展望するとき、グローバルなマネーフロー、欧州の政治情勢、中国経済、反グローバル化・保護主義の台頭がポイントとなる。トランプ米新大統領に関しては、従来の金融・経済環境を一変させる(ゲームチェンジ)可能性がある。日本経済の活性化のためには、新技術の利活用、既存産業の成長産業化、ベンチャーの創出強化が重要である。政府に対しては、金融政策頼みではなく、財政政策、構造改革を伴う成長戦略から成るポリシーミックスの実行を期待している。
久保田政一(司会:経団連事務総長)
- ● 2017年の内外経済情勢の展望
- 保護主義的な流れが世界経済を後退させるか
- Brexit&米国新大統領
-2つの不確実性要因 - Society 5.0に向けた胎動を感じている
- トランプ新大統領が従来の金融・経済環境を一変させる可能性
- ● アベノミクス再加速に向けた課題
- Society 5.0を目指す日本
- 潜在成長率を引き上げるために何が必要か
- 日本企業は技術革新のスピードについていけるか
- WTOのルールを活用する
- 優秀な学生がベンチャー志向になってきた
- 金融政策頼みではなく、ポリシーミックスで成長実現を
- 政治と経済の意思統一はできている
- 経済連携を推進せよ
- 持続可能な社会に向けて