下村節宏 (経団連審議員会副議長・産業競争力強化委員長/三菱電機相談役)
日本は、社会インフラが一斉に老朽化するという初めての経験に直面している。科学技術、社会工学、ICT、ファイナンス等、異分野が連携して対策を講じなければならない。特に、ICT等の活用により、既存の社会インフラの生産性を最大限に引き出すことが求められている。企業の生産性向上に向けては、社会インフラを通じて得られるデータの利活用が今後の課題である。行政が保有するデータのフォーマットを統一・標準化し、オープン化することで、産業界にその利活用を促せば、社会インフラの効率的な維持管理も可能となる。
毛利信二 (国土交通審議官)
人口減少に直面している日本にとって、経済成長の鍵は「生産性向上」である。国土交通省は、今年を「生産性革命元年」と位置付け、石井大臣のリーダーシップのもと、社会全体の生産性向上につながる、ストック効果の高い社会資本の効果的整備・活用に取り組んでいる。社会資本整備にあたっては、「予防保全」による戦略的メンテナンスや有効活用(賢く使う取り組み)、目的・役割に応じた選択と集中の徹底等が不可欠である。民間との対話を重視し、プロダクトアウトではなく、マーケットインの考え方により社会資本整備を進めていきたい。
川合正矩 (経団連社会基盤強化委員長/日本通運会長)
物流業は、道路・港湾・空港・鉄道などの社会資本を利用して事業を営んでいるため、社会資本の整備状況から大きな影響を受ける。物流業界としては、共同配送やモーダルシフトなど、企業・業界が連携して生産性向上に取り組む一方、政府には市場のニーズに応える物流を実現するための社会資本整備を望む。その意味では、首都圏3環状道路のミッシングリンク解消や、新たな高速道路料金導入による渋滞緩和などを高く評価する。「生産性革命プロジェクト」のさらなる推進を期待している。
菰田正信 (経団連都市・住宅政策委員長/三井不動産社長)
経済の成熟に伴い、社会資本の利用方法の見直しや、公共投資によって都市機能を向上させることが必要である。PPPやPFIの手法を用いて既存の公共施設を高度化、多機能化することで、社会資本に新たな価値を加えることも求められる。また、ハード面だけでなく、マスタープランや法制度といったソフト面の整備も生産性向上にかかわってくる。とりわけ、街ぐるみで地域価値の向上を図るエリアマネジメントの取り組みが重要になるだろう。さらには、都市において新たなビジネスを継続的に生み出していくため、優秀な人材の相互作用によるオープンイノベーションの場をつくり出していく必要がある。
根本勝則 (司会:経団連常務理事)
- ● 社会資本と生産性の関係
- 「生産性革命元年」と位置付け、取り組みを強化
- ユーザーである企業の視点を踏まえたインフラ整備を
- ハード・ソフト両面の整備で、都市の国際競争力を高める
- 稼働率の向上と長寿命化が鍵
- ● 既存の社会インフラの有効活用
- 「予防保全」と「賢く使う取り組み」で既存インフラを最大限活用
- 「ミッシングリンク」解消と「賢い料金設定」によるストック効果
- PPP・PFIの手法を用いて既存の公共施設を高度化・多機能化する
- ICTの利活用で既存インフラの効果を最大限に引き出す
- ● 今後の社会インフラへの投資の方向性
- 維持管理の省力・省人化に向けたICTの利活用
- 低廉かつ高効率な輸配送を実現するための道路整備を
- ストック効果を最大化させる「戦略的インフラマネジメント」
- ● 企業の生産性向上に向けた社会インフラへの期待と課題
- 社会課題の解決に挑戦する「都市づくり」
- 行政が保有する社会インフラのデータをオープン化するべき
- モーダルシフトの推進と自動隊列走行の実現
- 社会資本整備もプロダクトアウトからマーケットインへ