内山田竹志 (経団連副会長、未来産業・技術委員長/トヨタ自動車会長)
経団連の未来産業・技術委員長として、また総合科学技術・イノベーション会議の民間議員として、政府の「第5期科学技術基本計画」の策定に積極的にコミットしてきた。基本計画では、Society 5.0をコンセプトとして掲げ、その実現に向けて、政府、産業界、アカデミアそれぞれの果たすべき役割を明確に示すことができたと思う。Society 5.0の実現には、省庁・法制度・技術・人材・社会受容という5つの壁がある。産学官の連携を進め、これらの解消に取り組んでいきたい。
中西宏明 (経団連副会長、情報通信委員長/日立製作所会長)
日立グループとして、インフラ技術と先進的なITを組み合わせてトータルソリューションを提供する「社会イノベーション事業」に取り組むなかで、第4次産業革命、Society 5.0を推進する必要性を痛感した。デジタライゼーションの流れのなかで、日本の産業構造自体が劇的に変わること、また変われなければ日本の競争力が失われてしまうことを、産学官各分野のリーダーは認識する必要がある。研究者には、自らの知的欲求や関心を追求するだけでなく、社会的課題と向き合い、研究を通じて解決を目指す姿勢が求められる。
新井紀子 (国立情報学研究所社会共有知研究センター長)
2030年までにホワイトカラーの仕事の半分が機械に代替されると予測し、日本社会で危機感を共有してもらうためにあえて「ロボットは東大に入れるか」という刺激的なプロジェクトに取り組んできた。プロジェクトを通して、これまでの教育改革が十分に機能していないということが見えてきた。エビデンスに基づいた教育改革は急務といえる。日本の強みは、科学技術と「人」である。2030年にソフトランディングするためにも、人材育成に尽力していきたい。
橋本和仁 (物質・材料研究機構理事長)
総合科学技術・イノベーション会議では、「第5期科学技術基本計画」の策定にあたり経済界のコミットメントを強く求めてきた。産業競争力会議では「日本再興戦略2016」の最重要項目として「第4次産業革命の実現」を位置付けることができた。物質・材料研究機構理事長としては、当機構を材料に関するオープンイノベーションの「場」とするために、各企業トップに協力をお願いしている。総論賛成・各論反対とならないように、オープンイノベーションを実現しなければ生き残れないという意識を現場レベルまで浸透させていくべきだ。
江間有沙 (司会:東京大学教養学部附属教養教育高度化機構特任講師)
- ● Society 5.0の実現に向けた取り組み
- 「日本はSociety 5.0を目指す」というメッセージを世界に発信
- 産業界が深くコミットした「第5期科学技術基本計画」
- 第4次産業革命、そしてSociety 5.0が目指すもの
- 人間がロボットに仕事を奪われないために
- ● Society 5.0の実現に向けた課題
- アカデミアは社会的課題解決のための研究を志向せよ
- 産学連携でオープンイノベーションを実現する
- まず公共性の高いデータからオープンにしていく
- 市民が決断できるように、議論をオープンにするべき
- ● イノベーションの社会受容に向けて
- さまざまな人が議論に加わって、方向性を探っていくしかない
- 研究者は社会的課題に関心を持ち交流を広げるべき
- 日本が持つリソースを総動員して議論を進めていきたい
- ● Society 5.0の実現に向けて
- オープンイノベーションの拠点として研究機関の機能活用を
- オープンイノベーションで標準化がスムーズになる
- エビデンスに基づいた教育改革が必要
- デジタライゼーションの流れは止めようがない