石原邦夫 (経団連副会長・経済財政委員長/東京海上日動火災保険相談役)
2015年は、アベノミクス第2ステージがスタートするとともに、財政健全化の第1ステージである赤字半減目標が達成見込みとなるなど、経済・財政の好循環の定着・拡大に向かう日本が転換点を迎えた年であった。経済界としては引き続き、賃上げや積極的な投資拡大を通じて、経済の好循環に貢献していきたい。2016年は、GDP600兆円の達成に向けた足固めの重要な年となる。「新3本の矢」のなかでも、子育て支援(第2の矢)と社会保障(第3の矢)は、中長期的な成長期待を社会に根付かせるとともに健全な財政基盤を築くうえで極めて重要である。
高橋恭平 (経団連審議員会副議長・資源エネルギー対策委員長/昭和電工会長)
2014年から2015年にかけての企業業績は好調であったが、これはリーマンショック以降各社が行ってきた徹底したコストダウンやスリム化に、アベノミクスによる経済環境の好転が加わった結果である。需要そのものが大きく好転したとはいえない。今が日本経済再生に向けた正念場である。日本は「環境先進国」であり、素材産業としては、地球規模の課題への解決策を提供する「ソリューションプロバイダー」を目指していく。政府には規制緩和や税制・財政支援など事業環境の整備を期待する。
中村邦晴 (経団連通商政策委員長/住友商事社長)
2015年は、世界経済の変調を強く感じた年であった。一つは中国の景気減速であり、日本をはじめ世界各国の貿易量が伸び悩んだ。エネルギー面では、国際原油市場で米国のプレゼンスが大きくなり、中東の地政学的リスクがあっても、原油価格が安定するようになった。こうした激しい変化にどう対応していくか、企業の力量が問われている。TPP交渉が大筋合意に至ったことは、日本企業にとって追い風であり、大きなチャンスである。貿易・投資の自由化が進むなか、政府には、企業の「攻めの経営」を引き出す規制改革や税制改革が求められる。
中空麻奈 (BNPパリバ証券投資調査本部長)
日本国内の景気は、良い点と悪い点が混在し、まだら模様である。一方、海外の景気は、日本以上に弱い。とりわけ世界経済をけん引してきた中国の景気低迷が懸念される。こうした状況から、2016年の日本経済は足踏み状態が続くとみている。日本企業の技術やサービスに対する海外投資家の信頼は厚いものの、ガバナンスが不得手であるというイメージを払拭するため、説明性・透明性を高める努力が必要だ。日本政府には、規制緩和と財政再建への強いコミットメントが求められる。
阿部泰久 (司会:経団連常務理事)
- ●内外経済を展望する
- 日本経済は足踏み状態が続く
- アベノミクスの第2ステージが本格化
- これからが日本経済再生に向けた正念場
- TPP、東京オリ・パラ、アベノミクス第2ステージに期待
- ●成長の主役である企業・経営者に求められる役割
- ソリューションプロバイダーとしての素材産業を目指す
- 激しい変化に対応し、新たな価値・機能を提供する
- 賃上げと投資拡大を通じて、経済の好循環の拡大に貢献し続ける
- 実体経済を金融マーケットに先行させなくてはいけない
- ●政府に求められる環境整備
- 子育て支援(第2の矢)と社会保障(第3の矢)が重要
- TPPの活用促進に向けて
- 「環境先進国」を目指すための政策支援を