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月刊 経団連  巻頭言 歴史探訪小旅行-佐原

岡本 毅 (おかもと つよし) 経団連審議員会副議長/東京ガス会長

過日、歴史探訪小旅行と称して、友人と千葉県佐原に出かけた。金曜日の夕刻、八重洲口から高速バスに乗って一時間半、JR佐原の駅前に着く。まずは晩飯だ。勝手がわからないので、タクシーの運転手さんから情報収集し、お薦めの寿司屋さんへ。これが大当たり。何もかも旨くて、しかも安い。そうか、ここは銚子漁港にもほど近いのだから何も不思議はないわけだ。これにて投宿。

翌日はまず、日頃の俗塵を落とすべく、車で10分の香取神宮へ向かう。早朝の空気が爽やかな神宮は、皇室の崇敬も厚いといわれる立派なお社(重要文化財)。神職の方から「香取は伊勢、鹿島と並んで日本三大神宮の一つです」と言われた。正直なところまさかと思ったのだが、平安時代中期に成立した延喜式神名帳において、全国2861社のなかで「神宮」と称したのはこの三社のみであったとのこと。これは大変と、襟を正して拝礼する。

次は、佐原の町へ戻り、まずは伊能忠敬の旧宅と記念館を訪ねる。忠敬は佐原で酒造業等を営んでいたが、49歳で隠居。それから暦学、天文学などを学び、55歳での北海道測量を皮切りに、71歳まで日本全土を歩くこと、ほぼ地球一周分。そうして出来上がった伊能日本図は、その正確さで後世の人々を驚かせる。何歳であってもがんばれば、社会に貢献できるのだ。これぞ「高齢者の活躍」である。

佐原は利根川水運の中継港として発展した商人の町だ。中心部を流れる小野川沿いに、情緒豊かな商店が立ち並ぶ。地酒はもとより、江戸時代の製法を守る白味醂、秘伝の胡麻油など食指を動かされる物がずらり。しっかり買い込む。遅めの昼食は、地元で評判の手打ち蕎麦屋さんへ。地酒で仕上げた後、再びバスに乗り、うつらうつらしていると、もう八重洲口到着。充実の24時間だった。

佐原と同じく魅力に溢れた町が、関東一円に、さらに全国津々浦々にたくさんあるに違いない。もっともっと内外の多くの人に知ってもらい訪れてもらいたいものだ。「地方経済活性化」の一助になることは間違いない。

そしてもう一つ。金曜日の夕刻、少し早く仕事を切り上げるだけで、これだけ日常から離れることができる。「メリハリのある働き方の実践」と言ったら、自画自賛に過ぎようか。

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