友野 宏 (経団連副会長/新日鐵住金取締役相談役)
東日本大震災後、原子力発電所の停止に伴う火力発電比率の上昇、再生可能エネルギー固定価格買取制度による賦課金の上昇などにより、電力コストが大幅に上昇した。製造業の国際競争力確保の観点から、震災前よりもさらに安価で安定的な電力供給が求められる。そのためは、安全性の確保を前提として、国内で原子力を一定比率維持する必要がある。再生可能エネルギーについては、早急に固定価格買取制度を見直し、競争原理を導入することで、技術開発を促進すべきである。
豊田正和 (日本エネルギー経済研究所理事長)
エネルギーミックス策定にあたっては、「S+3E」にマクロ経済的影響という「M」を加えた「S+3E+M」の観点から、より総合的な議論が必要である。電源構成に関しても、ケースごとに国民生活や経済活動への具体的な影響を示すことで、国民の理解を促すべきである。原子力の安全性については、技術および制度・スキームについては世界標準といえるが、安全文化の確立は不十分である。安全について、「リスクがゼロのエネルギーはない」という前提に立ち、リスクを許容できるレベルまで下げる方向で議論を進める文化を確立していくべきである。
佐々木則夫 (経団連副会長/東芝副会長)
日本は、デフレ脱却と経済の好循環実現に向けた正念場の時を迎えており、成長戦略との整合性を持ったエネルギー政策が求められる。エネルギーミックスについては、「S+3E」の適切なバランスを取るべきである。ベースロード電源を確保することが重要であり、とりわけ原子力の比率については環境、経済性の両面から25%超とすることが望ましい。再生可能エネルギーについては、非効率・不安定・高コストといった課題解決に向け、将来に向けた研究開発に重点を置くべきである。
岩船由美子 (東京大学生産技術研究所特任教授)
日本は、エネルギー需要の将来像を十分に描けていない。震災後の節電問題などを経て、需要側は大きく変化した。もはや需要は所与のものではなく、消費者が必要とするエネルギー効用とは何か、どのようなサービスを求めているかといったところまで踏み込んで検討していく必要がある。さらに、供給側と連携し、デマンドレスポンスなど需給バランスを保つための新しい仕組みが求められる。人口減少によって、少なくとも民生における需要は減少していくが、一方で、電化は進めていくべきである。
根本勝則 (司会:経団連常務理事)
- ●日本を取り巻くエネルギー情勢
- 不確実性に満ちているエネルギー情勢
- エネルギー問題を解決し、経済の好循環を実現する
- 震災前よりも安価なエネルギー確保を目指すべき
- エネルギー需要のあり方が変化しつつある
- ●エネルギーミックスのあり方
- 「S+3E」の適切なバランスが重要
- 経済性の確保と環境保全を両立させるために
- 経済への影響を国民が理解できるかたちで提示する
- 将来的には電気へのシフトを進めていくべき
- 原子力は25%超を目指すべき
- 固定価格買取制度の見直しは不可避
- 完璧なエネルギーは一つもない
- ●エネルギー需要面の課題
- 需要をコントロールする仕組みづくりが重要
- 鉄鋼業界は「三つのエコ」でCO2削減に取り組む
- 企業や家庭における省エネ推進を後押しする政策を
- 省エネ政策はポリシーミックスで
- ●エネルギー供給面の課題
- 安全性の確保を大前提に
- 原子力にかかわる人材や技術の維持・確保
- 国際標準の安全文化を確立する
- 固定価格買取制度は競争とイノベーションを阻害
- 太陽光だけが異常に導入される固定価格買取制度は見直しを
- 課題の解決に向けて研究開発の推進を
- ドイツやスペインの事例を参考に固定価格買取制度の見直しを
- 電力システム改革の問題点
- 諸外国の改革事例における光と影
- 情報公開が進むことを期待する