1. トップ
  2. 月刊 経団連
  3. 巻頭言
  4. 民間企業主導のイノベーション

月刊 経団連  巻頭言 民間企業主導のイノベーション

野路國夫 (のじ くにお) 経団連審議員会副議長/小松製作所会長

アベノミクスにより、長く続いた日本経済の縮み志向が打破された。アベノミクスの第三の矢、成長戦略の実を挙げるために、今こそ、企業経営者ががんばらなければならない。技術革新により、顧客にとって新たな価値を創造すること、すなわち、民間企業主導のイノベーションを展開していかなければならない。政府に要求するだけでなく、企業がリスクをとってイノベーションに挑戦し、成長をけん引しなければならない。

イノベーションの鍵は、まずもって経営者が自社ビジネスの将来像を描くことにあり、その達成のため、常に世の中の先端技術を知り、将来の技術動向を読みながらビジネスシナリオを描く必要がある。自社ビジネスのビジョンを実現するための技術が見つからなければ、世界から探し出してこなければならない。自前主義を脱し、オープンイノベーションに大きくかじを切る必要がある。

コマツでは、2008年から海外の鉱山で鉱石の運搬のための無人ダンプを投入した。その実現のためには、米国等のベンチャー企業の技術を積極的に活用した。鉱山は苛酷な環境のためにオペレーターの確保が難しかったが、無人ダンプのおかげで鉱山会社のコストダウンにつながり、コマツも高付加価値の商品をつくることでウィン・ウィンの関係を実現した。

日本では企業の研究開発費12兆円のわずか0.7%、900億円しか大学に支出されていない。他方、ドイツでは6兆円の3.8%、2400億円が大学に支出されている。また、日本では、ドイツのフラウンホーファー研究機関のように、大学、公的研究機関の技術シーズを事業化に結び付ける「橋渡し」の機能が不十分である。加えて、産・学・官の人材の流動性は圧倒的に少ない。

今こそ、企業経営者が新たなイノベーションに挑戦する積極的な意思を持ち、産学官連携にもっと資金を使うこと、大学、公的研究機関との人材交流を拡大すること、若い先端技術ベンチャーとのM&A、連携を進めることを積極的に行うべきである。

「2015年4月号」一覧はこちら

「巻頭言」一覧はこちら